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第11回三島クリニック講演会

2012年1月15日開催

 講師   東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター
    
   血液浄化療法科 教授
         秋葉 隆先生


 演題   「透析で末永く」

【講演内容】 

腎臓はそら豆の形をした握りこぶしくらいの大きさをした臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あり、@老廃物を体から追い出す、A血圧を調節する、B血液をつくる司令官、C体液量・イオンバランスを調整する、D強い骨をつくるなど大切な働きをしています。

 人工腎臓が実用化されて半世紀が経過しましたが、その間透析患者は急激に増加し、我が国においては2010年末で297,125人(国民430.9人に一人が透析患者)となり現在(2012年1月)は30万人を超えています。

 日本の透析医療は死亡率でみても世界で一番優秀ですが、それでも一般人口に比較して平均余命は半分です。
透析患者さんの生命予後が不良な原因としては、
1、透析導入になった病気(原疾患)により、透析導入前に体が痛めつけられている。

 これは、尿蛋白と腎機能低下することは心血管疾患の合併頻度を高めるというデータや、透析患者さんにおいては年齢にかかわらず心血管疾患による死亡リスクが高いということから明らかです。また、透析患者さんの高齢化、導入患者の高齢化、糖尿病性腎症を原疾患とする導入患者の増加など死亡リスクが高い患者さんの割合が多くなっていることも生命予後が不良な原因となっています。

2、透析不足(透析患者は尿毒症状態である)
 生体腎は24時間連続、血流量1000ml/分ですが、人工腎(透析)では4時間週3回、血流量200〜250ml/分なので、時間は1/14、血流量は1/5〜1/4、すなわち1/70〜1/56の血液しか浄化できていないことになります。従いまして、透析患者さんの症状の一部は透析時間と回数を増加するだけで、コントロール可能です。
 また、透析時間が長くて時間当たりの除水量が少ない、あるいはKt/V(ケイティオーバーヴイとよみ透析時間・血流量・体格で決まる数値で透析量を表す)が高いほど生命予後が良好です。

3、透析合併症の治療が不充分(CaP骨代謝異常、高血圧、貧血、高脂血症、肝炎など)
 透析前血清カルシウム濃度が高すぎても低すぎても心筋梗塞発症のリスクが高い傾向があります。また、透析前血清コレステロール濃度が高すぎても低すぎても生命予後不良ですが、心筋梗塞に限ってみると血清コレステロールが高い、あるいは血清LDLコレステロールが高いほど発症のリスクが高くなっています。血清LDLコレステロールが高い患者さんはぜひ心臓の検査を受けていただきたいと思います。
 透析前血清リン濃度は高すぎても、低すぎても生命予後不良です。具体的数値でいうと、血清リンが6.5を超えている、あるいは2.5未満ある場合死亡リスクが上昇します。血清リンが高いということは食事からのリンの取りすぎが原因で、低すぎるということは食事が十分に取れていない低栄養の人です。また、血清リン濃度が高いと心筋梗塞発症のリスクが高くなります。
 透析前血清カルシウム濃度は高すぎても、低すぎても生命予後不良です。特に血清補正カルシウム濃度が10.2を超えると死亡リスクが増加します。

 腎臓の機能が低下したらエリスロポエチンという赤血球を増やすスイッチの働きをするホルモンの分泌が少なくなり、骨髄での赤血球産生が十分に刺激されず腎性貧血となります。
透析導入前においては、貧血が強いほど末期腎不全になる割合が高くなります。また、早い時期から貧血治療をする方が、腎臓のために良いことも明らかとなっています。これは、貧血と腎機能低下は相互に増悪因子であるということです(腎機能低下が貧血を悪化させ、貧血の悪化が腎機能低下を進めるということ)。
 エリスロポエチン製剤による腎性貧血の改善により、息切れ・疲れやすさ・立ちくらみなどの自覚症状は改善され、ヘモグロビン濃度が高いほど入院のリスクや死亡のリスクは低くなります。現在、エリスロポエチンの赤血球造血以外の作用について研究されています。

 カルシウム代謝異常・リン代謝異常・二次性副甲状腺機能亢進症は、透析患者さんに特有の血管の中膜石灰化を起こします。中膜石灰化によって、血管の弾力性が失われ、狭心症や心筋梗塞を起こしやすくなります。これは、カルシウム代謝異常・リン代謝異常・二次性副甲状腺機能亢進症は、骨の病気を引き起こすということだけではなく、血管の病気でもあるということです。そこで、以前から使われている「腎性骨症」という病名は骨の形態異常のみを表すので、全身に起こる広い臨床症状(心血管病、骨折など)を含めたCKD−MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル異常)という新しい概念が使われるようになってきました。
 CKD-MBDで最も生命に危険のあるものは、冠動脈の石灰化と大動脈弁の石灰化です。カルシウム含有リン吸着薬(カルタン)より塩酸セベラマー(レナジェル)を服用してリンのコントロールをする方が、冠動脈・大動脈弁の石灰化の進展を軽減できるというデータが出ています。しかし、ステージを上げ長期的にみていかないといけませんので、現時点ではカルタン服用で冠動脈・大動脈弁の石灰化による死亡率が上がるかどうかは分かりません。

 東京女子医科大学外来血液透析患者133名のうち、Caが8.4〜10.0、Pが3.5〜6.0の適正範囲内の患者は48.9%と約半数しかいませんでした。また、Ca、P、インタクトPTH(適正範囲:180未満)がすべて適正範囲内の患者は24.8%しかいませんでした。この割合はどの施設でも同じような傾向がみられます。

 慢性腎臓病では、CVD(心不全・心筋梗塞、脳卒中などの心血管病)を発症することが多くなります。腎機能障害の進展とCVD発症に関わる危険因子として、保存期腎不全から末期腎不全では、栄養障害・高血圧・高血糖・脂質代謝異常・尿毒性物質・貧血・アシドーシス・ミネラル(Ca、P、K)代謝異常・体液過剰などがあり、透析療法に導入後は更にシャントの過剰な血流・エンドトキシン・透析膜の生体適合性などの要因が加わります。腎機能障害の進展、あるいはCVD発症を抑制するためには、これら一つ一つの原因を取り除いていくことが大切です。

4、コンプライアンス不良(服薬・食事制限・透析時間などが守れない)
 日本の透析患者さんと欧米の透析患者さんを比較すると、透析時間については日本の患者さんの方が決められた通りちゃんと守る人が多いが、体重増加量が多い人の割合は欧米と同じ程度です。
 
 
高血圧管理・塩分制限・蛋白摂取制限・脂質代謝管理・糖代謝管理・貧血改善のために、医者やスタッフから毎日の食事・生活習慣・薬物治療・検査などについていろいろなお願いをすることが多いですが、「こちらの言うことを全部守ってほしい」という気持ちと「到底全部は守ってもらえないだろうし、ある程度の自由は謳歌してほしいし、だけど、それが患者さんのマイナスになったら困るなあ」と始終悩んでいることを御理解いただき今日の話を終りたいと思います。


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