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第18回三島クリニック講演会

2019年4月14日開催

 講師  松山赤十字病院 腎臓内科
      部長 上村 太朗 先生
         
 演題  「透析患者さんが元気に長生きするために必要なこと」


【講演内容】 

透析医療は、医療従事者と患者さん達が車の両輪のようにそれぞれが協力し合って初めていい結果がもたらされ「元気に長生き」につながります。その助けの一つになればと思い今回のスライドを準備しました。

安定した透析、管理のいい透析を続けていくためにまず腎臓の本来の働きを理解しましょう。

腎臓の働き
①水分や塩分のバランスを一定に保つ。
②余分な水分・塩分をしっかり出し血圧を適切にコントロールする。
③余分な水分と一緒に老廃物や毒素を排泄する。
④赤血球をつくるホルモンを分泌する。
⑤ビタミンDを活性化して骨を強くする。(骨を強くするホルモンを作る)

腎臓の働きがなくなると…
①余分な水分や塩分がたまりむくみが起こり心臓の負担が増加します。
また、血圧が上がりやすくなり、高血圧や心不全などを起こしたりします。
②いろいろな毒素がたまり、合併症の原因になります。例えばカリウムが高くなると不整脈の原因となり、リンは動脈硬化を進行させる原因になります。
③貧血になり息切れや倦怠感を起こします。
④骨粗鬆症で骨が弱くなり転倒・骨折を起こしやすくなります。

こういうことからもともとの腎臓の働きを肩代わりする透析治療においては、
体液・血圧管理
腎性貧血に対する治療
溶質(毒素)の十分な除去
骨粗鬆症(医学用語ではCKD-MBD)に対してしっかり治療
栄養状態を良くする
シャント(バスキュラーアクセス)…いい透析を行うためには重要な要素
などが重要なポイントとなります。
これらの項目について話を進めさせていただきます。

透析患者さんの体液・血圧管理
透析患者さんの高血圧の原因はいろいろありますが、一番の原因は体液量の過剰によるものです。ドライウエイト(適正な体重)調整で60%以上の患者さんの血圧を適正化できると報告されています。
 
ドライウエイト(DW)とは
「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下がなく、長期的に心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。
具体的には、
①透析中の著明な血圧低下がない。
②透析終了時の血圧が透析開始時より低い。
 (終了時の血圧が開始時より高い場合は余分な水が残っていることが多い。)
③浮腫を認めない。
④胸部レントゲン写真で胸水がない。
⑤心胸比(CTR)が50%以下 です。

 
ドライウエイト(DW)管理の重要性
透析間体重増加は中1日で3%以下、中2日で5%以下
 
  ドライウエイト50kgとすると、
中1日で 50 × 3% = 1.5kg
中2日で 50 × 5% = 2.5kg ということです。

①中1日で4%を超える体重増加は、入院率・死亡率が上昇する。
②体重が増える人はリンも高くなり、動脈硬化が進行しやすくなる。また、体重増加(水分増加)で腸などのむくみも起こるため栄養の吸収が悪くなってアルブミン値や栄養指標は低くなる。
③塩分摂取が透析間体重増加に影響するが、カロリー摂取量は影響しない。
などの研究結果が報告されています。

透析間体重増加(除水量)2kg前後にするためには、1日の水分摂取量(飲水量)を600ml程度に抑える必要があります。
水分摂取量を制限するためには塩分摂取量を控えることが必要です。それは、血液中の塩分濃度が濃くなると喉が渇いて水を飲んで塩分濃度を薄めようとするためです。そのため、
1日水分摂取量600mlを守るためには、塩分摂取を6g未満にすることが必要であるといわれています。

塩分1日6gを守るための工夫としては、
①だしを効かせる … だしの風味を味わいましょう。
②麺類のスープを残す … スープには2~3gの塩分があります。
③漬物は少量 … 浅漬けがおすすめです。
④減塩の調味料を使う。
⑤しょうゆはかけるよりつける。
⑥スパイスで味にメリハリを … 辛味や酸味で薄味を感じにくくなります。
⑦みそ汁は具たくさん … 同じ塩分濃度でも減塩になります。
⑧加工食品を控える … 知らない間に塩分を摂ってしまいます。
⑨薄味に慣れる … 慣れてくると素材の味がおいしくなります。
⑩食膳に調味料を置かない … 塩分の追加をしないようにしましょう。
⑪料理は温かいうちに … 冷めると薄味に感じます。

塩分摂取量を守って水分管理を行い、
透析前血圧を140/90mmHg未満にコントロールすると生命にかかわる心血管系の合併症が少ないといわれています。

透析患者さんの貧血管理
腎臓が悪いと貧血になる理由は、機能が低下した腎臓からは血液を造る指令(エリスロポエチンというホルモン)が少なくなり、骨髄(血液を造る工場)で血液が造られにくくなるためです。

昔はエリスロポエチンというホルモンがあることは分かっていましたが、薬にすることはできなかったため貧血になると輸血に頼るしかありませんでした。最近ではエリスロポエチン製剤が作られ、それを補充することによって貧血治療をすることが一般的になっています。

貧血がなぜ悪いかというと、それは血が薄くなり
全身が酸欠状態になるからです。例えば、貧血の症状でだるい・疲れやすいというのは全身の筋肉の酸欠症状ですし、息切れ・動悸は心臓の酸欠症状、めまい・立ちくらみは脳の酸欠症状ということです。
貧血状態が強いまま長期に続くと、QOL(生活の質)低下、認知機能の低下、心臓の負担が増えることになって心血管疾患の罹患率・死亡率の増加が起こります。特に貧血が強いほど、心不全が悪化しやすくなります。このように
貧血は生活の質(QOL)の悪化だけでなく、身体の悪化(臓器障害)にもつながります。

全身の臓器、特に心臓と脳を守るために早期より貧血治療をしっかり行うことが透析で元気に長生きするために重要なことです。なお、貧血の原因が消化管出血のこともありますので、定期的に胃腸の病気の検査なども行うことが大切です。

腎性貧血の治療
腎性貧血の原因は腎臓での造血ホルモン(エリスロポエチン)が出ないことによるものですので、エリスロポエチン製剤を補充することが重要かつ根本的な治療になります。
貧血管理の目標値は、Hbで10~12g/dlです。Hbが13g/dl以上になり血液が濃すぎると、血圧が上がる原因にもなりますし、血管が詰まる(シャント閉塞、脳血管障害)の危険性が高まるといわれています。

透析患者さんの溶質(毒素)管理
毒素はたくさん除去できた方がいいのですが、この毒素がどれだけ除去できているかの標準的な指標にKt/V(ケーティーオーバーブイ)というのがあります。Kt/Vとは、透析器のクリアランスK(除去性能)と透析時間tを掛け算したものを体液量Vで割った値で、この数値が大きいほど毒素がよく抜けているということになりますし、合併症も少ないといわれています。
Kt/Vの目標値は1.4以上です。

Kt/Vにおいて、体液量Vは体格によって決まっており変えることはできませんが、透析器のクリアランスKは透析膜の種類・大きさ・血流によって変えることができますし、透析時間tも長くすることができます。従いまして、
たくさんの毒素を除去するためには、透析膜(種類・大きさ)・血流量・透析時間を調整することが重要です。

透析患者さんのカルシウム、リン管理
 
…なぜ、カルシウムとリンが大切なのか?
リンとカルシウムは腸から吸収されて99%程度が骨に蓄えられます。骨をより強くするために骨を作ったり壊したりの繰り返しを調整するために副甲状腺よりPTHというホルモン(副甲状腺ホルモン)が出されています。
吸収されたリンとカルシウムはすべて骨を作るために使われるわけではなく、余分なものは本来腎臓から尿中に排泄されます。しかし、透析患者さんでは腎臓からは出ていかないので透析で除去するということになりますが、透析で除去できる量は限られています。
従って、リンとカルシウムをたくさん摂り過ぎた場合は、透析で除去しきれないリンとカルシウムが骨以外のところに溜まってきます。特に余分なリンとカルシウムが一番接していることになる血管に溜まってくることになります。これを血管石灰化といいますが、簡単にいうと動脈硬化ということです。

血管の石灰化は全身の血管に起こるのでいろいろな臓器障害につながってしまいます。例えば、冠動脈(心臓の血管)に石灰化が起こると狭心症や心筋梗塞、脳の血管に起こると脳梗塞、下肢動脈に石灰化が起こると脚の血流が悪くなって最悪の場合下肢切断に至ることもあります。
このように血管の石灰化は非常に重篤な状態につながりかねないので、リンとカルシウムの管理は重要です。

カルシウムとリンを蓄積させないためには、
食事のリンを減らす。
腸でのリンの吸収を減らす。
透析でリンをしっかり除去する。

ガイドラインでは、透析患者さんの1日当りの蛋白摂取量は体重1kg当り1.0~1.2gとなっています。体重60kgの人なら1日60~72gとなりますが、この理想の蛋白量を摂ったとすると、蛋白1g当りにリンは約15mg含まれているといわれていますので、1日のリン摂取量は約1000mg、1週間では7000mgとなります。摂取したリンのうち約70%が吸収されるといわれていますので、リン吸収量は1週間で約4900mgとなります。
一方、透析でリンは1週間(3回透析)で3000mg程度しか抜けません。従って、差し引き約1900mgのリンが蓄積していくことになります。
このように、
理想的な蛋白量の食事でも通常の透析ではリンはからだに蓄積していくことになります。対策としては、透析時間を長くしてリンをたくさん除去することやリン吸着薬を服用してリンの吸収を抑えることです。

ただデータを良くするために食べない(過度の蛋白制限)はよくありません。よく食べて栄養状態はいいけどリンが多少高いという人より、あまり食べていなくて栄養不良になっている人の方が合併症の危険性が高いというデータがあります。
「しっかり食べて栄養をとりしっかり透析、上がるリンは薬で管理」ということが大切です。

リン 3.5~6.0mg/dl、カルシウム 8.4~10.0mg/dl、インタクトPTH 60~240pg/ml の基準値内にコントロールすることで合併症の危険性を下げることができます。特にリンは基準値より高いほど合併症の危険性が急激に高まります。また、リンの異常値の回数が増えるほど合併症の危険性が高まりますので日々の管理が大切です。

具体的にどういうものを注意して選んでいけばいいかというと、当然のことながらリンの多いものを避けていただくということが重要です。ソフトドリンク(特にコーラ)、プロセスチーズ、加工した肉類、ハム・ソーセージ、インスタント食品には添加物としてのリンが多く含まれていて、さらに
添加物のリンは腸での吸収率が100%といわれていますので制限が必要です。植物性の蛋白、パスタ(炭水化物)などは比較的リンが少ないです。卵黄はリンが高めですので控えていただきたいですが、卵白はリンが非常に少なく質の優れた蛋白質ですのでたくさん摂っても大丈夫です。オリーブ油などの植物油にもリンは少ないので上手に利用していただきたいと思います。

種々の食品中のリンの注意点をまとめると、
・魚・肉にはリンは多い。
・特に加工肉、ハム、ソーセージ、魚では内臓も丸ごと食べる場合には、リン摂取量に注意。
・乳製品にリンは多い。
・特に加工しているものは、添加リンが増加する。
 プロセスチーズは注意が必要。
・植物性のリンの多くはフィチン酸と結合し、吸収率は低い。
・コーラをはじめ炭酸飲料、コーヒーでもインスタントは一般的にリン含量が多くなる。

添加リンは食品加工過程で加えられ、内部に染み込まないため、調理の工夫で簡単に低減することが可能です … ~お湯にさっと通すだけ~
加工食品をお湯に通すと、食品添加物は短時間でお湯に溶け出す。
 特別な技術は不要ですが、添加物(無機リン)が溶け出たお湯は必ず捨てる。
インスタントラーメン・中華麺はゆでこぼす。
 麺をゆでたら、ゆで汁を捨て、新しい湯でスープを作り添加物(無機リン)を減量。
 カップ 麺もかやくと麺が別々のものを選び同様に作れば無機リンなど添加物が半減。
魚肉・練り製品は下ゆで。
 ちくわ、かまぼこなどの練り製品は、下ゆですると添加物が減らせる。
 おでんの具も、そのまま一緒に煮るのではなく、分けて下ゆで・煮汁は一度捨てる。
 かまぼこは薄くスライスするとより添加物の抜けがよくなる。
ハム・ソーセージは湯通しする。
 ソーセージは裏表に切れ目を入れると表面積が大きくなり、2~3分の下ゆでで、保存料や添加物は半減。炒めても添加物は減らず、炒めものの前に湯通しする。


透析患者さんは
栄養(カロリー)のあるものをしっかり食べて、しっかり運動して痩せないようにしましょう。上手なカロリー補充方法としては、粉飴やMCT(中鎖脂肪酸)製品を利用することをお勧めします。インターネットや通販で簡単に購入できます。
  粉飴 
  でんぷんを原料として製造した低甘味度水飴を溶解しやすいよう粉末にした製品。蛋白質や塩分を含まず糖質のみを成分として、粉飴100gあたり388kcalと砂糖と同じエネルギー量ですが、甘さが砂糖の1/5程度で、砂糖の代わりに使えばカロリーアップ可能。 
   
  MCT(中鎖脂肪酸)製品 
  食べた後体に蓄積されず効率よくエネルギーとして消費される。MCTはすぐにエネルギーとなる為、腎臓病や低栄養状態の方のエネルギー補給に適する。高エネルギーですが、蛋白質や塩分、カリウム、リンは含んでおらず、温かいものから冷たいものまで簡単に溶けるので、料理に混ぜてカロリー補充が出来る。 

透析患者さんの運動療法

運動は気持ち良く、生活の質を改善します。また、お腹も減りよく食べられますし、心地よい疲れは良眠を促すことができます。
透析患者さんの運動療法に関する研究においても、
・ 透析2-3時間目の30分間エアロバイクがムズムズ足症候群を改善
・ 6か月間透析中にエアロバイク(軽め負荷)をすると、内服薬と同等にムズムズ足症候群と鬱が改善。            
・運動すると善玉コレステロールが上昇。善玉コレステロールが高いと生 存率高く身体活動能力高い。               
・週3回透析中30分間の運動で心臓収縮機能がよくなり、心拡大が改善。 
 などの研究結果が報告されています。

安定したシャントは安定した透析に必須の条件
バスキュラーアクセスには、内シャント(AVF)、人工血管(AVG)、動脈表在化、透析用長期留置カテーテルなどがあり、それぞれ長所と短所はありますが、何より大切なのは今のシャントで長く安定した透析を行うことです。そのためには、瘤にならないように穿刺場所をずらす・穿刺を上手にする、閉塞しないように風船治療を行う、感染に注意するなどが大切です。

シャントを長持ちさせるために患者さんが気を付けることとしては、
シャントの血管を圧迫しない。
  シャント肢を下にして腕枕をしない。
  シャント肢で重いものを持たない、鞄をぶら下げない。
  シャント肢をぶつけない。
  シャント肢で血圧測定をしない。
  時計やブレスレットをはめない。(吻合部が手首の近くにある場合)
シャントの状態をチェックする。
  触って拍動を確認する。
  耳に近づけて音を確認する。
シャント感染を防ぐ。
  シャント肢を清潔にしておく。
などです。

これまでの話をまとめると、
元気に透析治療を続けていくためには、「しっかり食べて(リン/塩分/水分は控える)、しっかり動いて、しっかり透析する」ことが重要なことです。
これらを実行することによって、さまざまなことが好循環につながっていき、合併症のない透析治療を継続行くことができ元気に長生きができると思います。

私の話は以上になります。ありがとうございました。


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