リンが高いとなぜ悪い?

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リンについては、血液検査の結果を皆様も関心を持ってみられてるでしょうし、値が高いと「回診時にまた注意される」とゆううつになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「リンが高いとなぜ悪いのか」ということを理解していただくと、繰り返し注意されることにも納得していただけるのではないかと思いますので、今回は血液中でリンが高くなることによる危険性、すなわち「高リン血症の危険性」について話を進めていきます。

 最初から結論を申しますと、高リン血症は透析患者さんに二つの悪いことを起こします。一つは、
「二次性副甲状腺機能亢進症」、もう一つは「血管の石灰化」です。

まず、「二次性副甲状腺機能亢進症」について、重要な部分だけをまとめてみます。ここで、二次性というのは腎臓が悪いため、これにひきつづいて発症したという意味です。
副甲状腺は上皮小体ともいわれ、首のところにある甲状腺の裏の上下に4個ついています。甲状腺にくっついているので副甲状腺と名前がつけられていますが、まったく別のホルモンを出す臓器です。副甲状腺から出るホルモンを
副甲状腺ホルモン(PTH)といいます。副甲状腺は、この副甲状腺ホルモンを分泌することによって血液中のカルシウムとリンのコントロールをしています。いわば、副甲状腺はカルシウムとリンの代謝の司令塔です。

しかし、血液中のリンが高くなると、副甲状腺が腫れて大きくなり副甲状腺ホルモン(PTH)を必要以上に分泌するようになります。これを副甲状腺ホルモンが出すぎる状態、すなわち副甲状腺の働きが亢進した病態ということで「副甲状腺機能亢進症」といいます。

 副甲状腺機能亢進症になると、過剰に分泌された副甲状腺ホルモンによって骨がどんどん溶けていきます。骨が溶けてスカスカになると、もろくなり骨折しやすくなりますし、体中あちこちの骨や関節が痛くなってきます。また、いらいら感やかゆみが出ることもあります。このようなことから、副甲状腺機能亢進症は透析患者さんの日常生活に支障をきたし、生活の質(QOL)を著しく損なう合併症と言えます。

 しかし、副甲状腺機能亢進症の怖さは、骨や関節の痛みだけではありません。過剰な副甲状腺ホルモンによって骨から溶け出したリンとカルシウムが結合して石灰となり、関節の周囲や血管など正常では石灰などないところにつきます。これを
「異所性石灰化」といいますが、特に血管壁へ石灰がつくことが大きな問題で、最近特に重要視されています。これについては次の話の中でもう少し詳しく説明したいと思います。ここまで、高リン血症によって副甲状腺機能亢進症が起き、それによって「異所性石灰化」が起こると説明しましたが、実は、副甲状腺機能亢進症が起きていなくても高リン血症であるというだけで「異所性石灰化」は起きています。高リン血症、すなわち血液中のリンが高いと、その多すぎるリンが血液中のカルシウムとくっついて体のあちこちに沈着する(くっつく)のです。

「異所性石灰化」で一番問題になるのは先ほども言いましたとおり血管壁の異所性石灰化です。血管壁への異所性石灰化、すなわち血管の石灰化は透析患者さんにおける動脈硬化の重大な危険因子です。血管石灰化による動脈硬化によって心筋梗塞、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が非常に起きやすくなります。さらに、心筋や心臓弁の異所性石灰化は透析患者さんの心臓の働きの低下の原因のひとつにもなっています。


表1.透析患者の死因
日本透析医学会統計調査委員会2003年

死亡原因

心不全

25.0

感染症

18.5

脳血管障害

10.7

悪性腫瘍

8.5

心筋梗塞

6.2

カリウム中毒/頓死

5.5

悪液質/尿毒症

2.7

出血

2.2

慢性肝炎/肝硬変症

1.7

その他・不明

19.0

 表は、日本透析医学会統計調査委員会による透析者の死因です。死因のうち心不全、脳血管障害、心筋梗塞といった心血管系疾患が41・9%を占めています。このように透析を受けられている方は、心血管系の病気で亡くなることが非常に多いのです。そしてここまでの話で、その死因となる心血管疾患の原因として、高リン血症による血管石灰化(=動脈硬化)が密接に関係していることもご理解いただけたと思います。

 さらに、日本透析医学会統計調査委員会による「透析前血清リンと一年間の死亡リスク」に関する報告によると、リンの値は4.0〜5.0mg/dlの間が一番死亡リスク(危険度)が低く、それ以上リンが高くなると死亡リスク(危険度)が高くなっています。この解析結果から
透析前血清リンは4.0〜6.0mg/dlを目標にコントロールするのが最も良いことが分かっています。なお、異所性石灰化の危険性を考慮すると血清リンは5.5mg/dl以下でコントロールするのが理想と言われています。

 リンはカリウムと違って、高くても直ちに生命に危険があるというものではありませんが、後になって必ず体に大きなダメージを与えます。
リンをコントロールすることは心臓や血管を守るために非常に重要なことで、それが長生きにつながるということをご理解いただき、リンにはくれぐれも注意してください。


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