貧 血 に つ い て
                                    
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貧血とは

 血液は赤血球、白血球、血小板という三種類の血球成分と血漿(けっしょう)という液体成分でできています。皆様もご存知の通り、白血球は感染などの時に外敵と戦う機能を持っています。血小板は血液を固め、出血を止める働きを持っています。そして、今回の話題となる赤血球の働きは、酸素を体のすみずみまで運搬することです。
 血液が赤く見えるのは、血球成分の大部分を占める赤血球の中にヘモグロビン(血色素)という赤い色素が含まれているからです。赤血球が酸素を運搬すると言っても、実際に肺で酸素と結合して体中の細胞や組織(皮膚や筋肉など)に酸素を運んでいるのは、赤血球の中にあるこのヘモグロビンです。
 正常では、赤血球は1立方ミリメートル中に400万〜500万という莫大な数があり、ヘモグロビンは血液100ml中に14gくらい含まれています。何らかの原因で、赤血球の数が少なくなるか、赤血球の中のヘモグロビンの量が減るか、またはその両方共に少なくなると血液はその赤い色が薄くなるわけで、これが貧血という状態です。

貧血の症状は
 貧血になると各臓器に充分な酸素が供給されにくくなり、組織が酸欠状態になります。体はそれに対応するために、血液を速く回そうとするので、脈が速くなるなどの症状が出ます。心臓が速く動くことから、動悸、息切れなども起こります。また、立ちくらみ・顔色が悪い・疲れやすい(倦怠感)・食欲不振・手足が冷えるなどの症状もよく見られます。
 なお、透析中、血液回路内の血液の色がいつもより薄く感じたり、透析を開始してまだあまり除水をしていないのに血圧が急激に下がるなどの症状がみられた場合は、貧血が進んでいることを疑う必要があります。

なぜ貧血になるのか

 貧血の主な原因は次のようなものです。
T.エリスロポエチンの分泌低下
 正常な腎臓では、エリスロポエチンという赤血球を造ることを骨髄に命令するホルモンが分泌されています。腎臓の働きが悪くなるとこのホルモンが分泌されなくなりますので造血能力(赤血球を作る能力)が低下してきて貧血になります。腎臓が悪くなることによって起こる貧血なので、腎性貧血とよばれます。透析患者様の貧血の一番大きな原因は、このエリスロポエチンの分泌低下によるものです。

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U.出血による貧血

 次に起こりやすいのは、出血による貧血です。透析中には、血液が固まらないようにヘパリンなどの抗凝固薬を使いますし、多くの患者様がシャントの血液の流れをよくする薬を服用されています。そのため、少量の出血でも、持続的にあるいは大量の出血につながりやすく、貧血の悪化の原因になります。
 出血には、血尿・痔出血・鼻出血・消化管出血・生理出血・怪我などがありますが、最も重要でよくみられるのが消化管出血です。消化管出血は、排便時、便の色を見ることによってある程度のみきわめができますが、場合によっては便の潜血反応という検査で初めて分かる場合もあります。

 黒い便というのは、胃・十二指腸といった上部消化管からの出血で、真っ赤に付着するのは直腸からの出血や痔の出血です。どこから出血しているか、どういう胃腸病で出血しているのかを内視鏡検査などで調べることが必要です。

V.鉄分の不足、栄養不足
 赤血球の中のヘモグロビンは、血液中の鉄分と蛋白質から造られています。従いまして、鉄分が不足したり、食欲不振が続いて食事量が少なく蛋白質を中心とした栄養が不足している場合は、いくらエリスロポエチンを使用しても赤血球は造られなくなり貧血になります。

W.透析不足
 透析不足などで血中の尿毒素が蓄積することによって、血小板の働きが低下して出血しやすくなったり、赤血球の寿命が短くなることによって貧血になります。と言いましても、当院においては、効率のよい透析を充分行うことは透析治療の基本と考えて、それを日々実行してきておりますので、透析不足による貧血はあまり現実的でなくなっているのが実情です。
 また、透析液の清浄化を徹底すると、貧血の改善にも効果があることが明らかになっています。透析液の清浄化は、当院がずっと以前から取り組んできたことですので、透析アミロイド症の進展防止のためだけではなく、貧血の防止という観点からも透析液の清浄化に今後とも努めていきたいと考えています。

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腎性貧血の治療

 腎性貧血の第一の原因が、腎臓からのエリスロポエチンの分泌低下ですので、人工的に合成されたエリスロポエチン(商品名:エポジン、エスポー)を注射で補充します。
 エリスロポエチンは、大体ヘマトクリット値で30〜33%程度を目標に投与しますが、貧血の症状の強さあるいは適正なヘマトクリット値には個人差がありますので、個々の患者様に応じた目標値を設定して投与しています。また、エリスロポエチンの使用量が多過ぎると、高血圧や頭痛などの副作用が起きることがあり、さらにヘマトクリット値を必要以上に上げすぎると、シャントの閉塞や、動脈硬化が高度のときには心筋梗塞や脳梗塞などの原因となることもあります。このようなことから、高齢者の方や原疾患が糖尿病の患者様には30%前後を上限に、若くてまだ仕事を続けられている患者様には34%前後を上限にと考えて投与しています。

 消化管出血による貧血に対しては、皆様に排便時に便の色をチェックしていただくことが重要です。もし、出血の可能性があれば胃腸の検査を嫌がらずに進んで受けていただきたいと思います。他の病気と同じく消化管出血も早期発見・早期治療が大切です。また、最近は内視鏡検査も比較的楽に受けられるようになってきています。

 鉄分の不足に対しては、体の中の貯蔵鉄の量をみる検査(フェリチン)や血液中で実際に働く鉄(機能鉄)の量をみる検査(トランスフェリン鉄飽和率)の値をチェックしながら、注射で鉄分を補給します。鉄分の欠乏が著しい方には、透析のたびに続けて5回〜10回程度連続投与します。鉄分の欠乏があるが、それほど少なくない方には週1回の投与でしばらく続けて、検査データをみながら中止するか継続するかを判断します。また、皆様には規則正しい生活をして、バランスのよい食事を心がけ栄養不良にならないように気をつけていただきたいと思います。

 貧血が改善されると、辛い貧血症状がなくなるだけでなく、活動力も向上し日常生活における生活の質(QOL)が改善します。元気で長生きのためにも貧血にならないことが重要なことだということをしっかり気に留めて、検査データに充分注意を払っていただきたいと思います。

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