「検査データの見方」について

                                    
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 皆様には、定期的にあるいは必要時にさまざまな検査が行われています。これらの検査には、大きく分けて二つの目的があります。まず一つは、透析治療が適正に効率よくできているかどうかを見るためのもの、もう一つは合併症の早期発見を目的にしたものです。毎回の透析を適正に効率よく行い、合併症を早期に発見することは、透析を受けながら長期に渡って体調を良好に維持するためには非常に重要なことです。
 また、透析治療が適正に行われているかどうかは、食事療法という自己管理がいかに上手にできているかということに大きく左右されますので、食事の不摂生がすぐ検査データに反映されるということもあります。このようなことから、透析に関しては全て病院まかせでいいという方がいらっしゃいましたら、そういう考えは改めていただき、自分の検査データには関心と責任をもち、基本的な検査項目についてはある程度の知識を持っていただきたいと思います。

 今回は、定期検査の後皆様にお渡ししているレーダーチャートにある検査項目について、その見方を説明していきたいと思います。


尿素窒素(BUN)
  目標値 透析前値  60〜90(mg/dl) 
  
 尿素窒素は、たんぱく質がエネルギーとして体内で燃やされた後に残るカスで、体にたまる老廃物の代表です。たんぱく質のとり過ぎや透析不足があると高くなります。
トルコ桔梗
撮影:2007.1.17
 尿素窒素そのものは強い毒性を持った尿毒症の毒素ではありません。しかし、尿素窒素の値が高い時は他の尿毒素の値も上昇しているため、尿素窒素が高い状態が長く続くといろいろな合併症が起きてくる可能性が高くなります。透析を受けている無尿の患者様で、一日に通常の量のたんぱく質(体重1s当たり1.0〜1.2g)を摂取されている方でしたら、週始めの検査で尿素窒素の値(透析前)が60〜90になります。90以上になるようでしたら、たんぱく質のとり過ぎが考えられます。また、逆に60より低いようでしたら、透析でよく抜けているというよりは、食事であまりたんぱく質をとっていない、あるいは食事が十分できていない場合が多いです。
 尿素窒素の透析前と後の値から、透析の効率(透析量)をチェックして、結果がよくない場合は透析条件を検討して、常に適正な透析が行えるようにしています。透析時間が不足したり、シャントの状態が悪く血液流量が少ない場合などでは、十分な透析効率が得られず血液中の尿素窒素の値もだんだん上昇していきます


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クレアチニン(Cr)
  目標値 透析前値  男性 12〜15(mg/dl)
            女性 10〜13(mg/dl)
 クレアチニンも尿素窒素と同じで体にたまる老廃物です。主として筋肉の働きの結果できた老廃物ですので、筋肉の多い男の人に高い値がでやすく、また体を使ったり運動したりすると増加します。もちろん透析不足でも増加します。尿素窒素と違って食事による影響を受けませんので、透析効率をみるための良い指標になります。


尿酸(UA)
  目標値 透析前  9.0(mg/dl)以下
 尿酸は、体内で「プリン体」と呼ばれる物質が分解されてできるもので、痛風のもとになる物質です。腎臓から排泄されるため腎不全の場合は体内に蓄積してきますが、透析をしている場合、尿酸値がある程度高くても痛風発作を起こすことは稀です。
 透析効率をみるのに補助的に用いられます。透析前の尿酸値が頻回に10mg/dlを以上になる場合は、尿酸を下げる薬(尿酸生成阻害薬)を服用していただきます。
(痛風とは、尿酸が過剰に増えて針状の結晶になって体のいろいろな場所に沈着する病気です。特に関節などに沈着した場合は激しい痛みを起こします。)


GOT(AST) 目標値  8〜38(IU/L)
GPT(ALT) 目標値  4〜43(IU/L)
 GOTとGPTは、肝機能検査の代表的なものです。両方とも肝臓の細胞に多く存在する酵素で、肝臓に障害が起こると肝細胞から血液中に漏れ出してきます。そのため、肝炎の早期発見と経過観察のためには重要な検査です。肝炎の場合はGOT、GPTがともに高くなりますが、GOTのみが上昇している場合は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患や骨格筋の障害があることがあります。
 最近はGOT、GPTをそれぞれAST、ALTというようになってきています。


カリウム(K) 
  目標値 透析前 5.5(mEq/L)以下
 腎臓の働きが正常な場合は、たくさんカリウムを摂取しても尿にカリウムが排泄され、血液中のカリウムは3.5〜5.0mEq/Lの正常値に保たれます。しかし、透析患者様では尿中にカリウムが排泄されないため、血液中のカリウム濃度は高くなります。
 高カリウム血症になると、手足や唇のしびれ、口のこわばり、脱力感、胸苦しさなどの症状がみられます。放置すると心臓が止まってしまうこともあるので、直ちに治療が必要です。
 カリウムが高くなる最大の原因は、カリウムを多く含む食べ物のとり過ぎです。また、栄養不足(カロリー不足)、透析不足、消化管からの出血(下血)によってもカリウム値が上昇します。
 高カリウム血症を予防するには、カリウムの多い食べ物(果物、イモ類、生野菜、豆類など)をひかえ、十分に透析を行うことが大切です。日頃からカリウムが高い方は、カリウムを下げる薬をきちんと服用することを心がけ、栄養士の食事指導を積極的に受けてください。


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カルシウム(Ca) 
  目標値 透析前値  8.4〜10.0(mg/dl)
 血液中のカルシウム値が低い状態が続くと、PTH(ピー・ティー・エイチと読み、副甲状腺から出るホルモンのことです)が過剰に分泌され、そのPTHの働きによって骨が溶けます。溶けた骨から血液中にカルシウムが補給されるわけですが、このような状態が続くと骨はもろくなり骨折しやすくなります。(PTHにつきましては、管理目標値などについて次回の透析室ニュースで説明する予定です。)
 逆に血液中のカルシウムが高すぎると、リンと結合して骨以外のところにカルシウムが沈着します。これを異所性石灰化と言います。(異所性石灰化については、次のリンの項目のところで説明します。)
 カルシウムは検査データを見ながら、薬剤(内服あるいは注射)で適正な値にコントロールしなければいけませんので、カルシウム値が低くなったからといって自己判断でカルシウムの多い食べ物を食べたり、サプリメントを買って飲むようなことはしないでください。カルシウムを多く含む食品はリンも多いので逆効果になります。
カーネーション
スィートピィ

撮影:2007.1.17


リン(P)

  目標値 透析前値   3.5〜6.0(mg/dl)
 食事から摂取されたリンは、そのほとんどが腎臓の働きによって尿中へ排泄されるしくみになっています。しかし、透析患者様の腎臓はほとんど機能していませんので、リンを排泄することができず、血液中のリンの濃度が高い状態(高リン血症)が起こります。
 高リン血症が持続すると、骨が弱くなり骨折しやすくなるばかりでなく、血液中で過剰になったリンがカルシウムと結合し骨以外の場所に沈着します。これが、先ほどカルシウムの項でも出てきました異所性石灰化と呼ばれるものです。
 異所性石灰化が血管に起こると動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や脳出血・脳梗塞などの脳血管障害を引き起こす原因にもなり、生命に影響を及ぼします。また、皮膚への異所性石灰化によって頑固なかゆみ、眼の結膜の場合には眼が赤くなる、関節に起これば関節が痛くなる、などといった症状が出現します。
 以前は、「高リン血症は骨の病変を起こす」という考え方に基づいての治療が一般的でしたが、最近では、「リンは、長期的には血管を含む全身の石灰化を起こし生命に危険を及ぼす毒素」をいうとらえ方になってきています。
 高リン血症を防ぐには、「十分な透析を行い、リンをできるだけ除去する」、「食事の中のリンを体内に吸収させない薬(リン結合剤)をきちんと飲む」、が基本ですが、なによりまず「食事でのリン摂取を控える」ことが一番重要です。
 リンが高い人は、栄養士の栄養指導を必ず受けてください。


Ca×P(カルシウム・リン積)
  目標値 透析前値   55 以下
 これは、カルシウム値とリン値を単純に掛け算したものです。この値が55を超えると、先ほど出てきた異所性石灰化が起こります。
 リンとカルシウムを目標値内に維持することで、通常カルシウム・リン積は適正なレベルに維持することができます。


心胸比  
  目標値   男性  50 %以下
        女性・高齢者・心疾患のある方   55 %以下
 心胸比とは、胸部レントゲン写真上で胸(胸郭)の幅に対する心臓の幅の割合を言います。余分な水分が体にたまってくると、この数値が大きくなってきますので、ドライウエイト(適正体重)を決める時の良い指標になります。
 心胸比は、透析患者様の場合、健康な人と比べて少し大きめで、男性で50%以下、女性で55%以下が望ましいですが、高齢者の方や、心臓の病気(弁膜症、心筋症、心不全など)がある方は多少大きくなります。
 心胸比が大きくなった場合、体がやせてその分水がたまってきている可能性がありますので、ドライウエイトを下げる必要があります。なお、レントゲン写真を撮る時、息の吸い方が少ないと心胸比が大きくなりますので、必ず大きく息を吸ってください。

 その他の検査データにつきましては、次回以降の透析室ニュースで取り上げていく予定です。

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