「検査データの見方」について(U)

                                    
29号メインページに戻る

 今回も前回に引き続き検査データの見方について説明していきたいと思います。

ヘマトクリット(Ht)
  目標値 30〜33 %
 血液全体量に対する赤血球の割合を、パーセントで表したものです。貧血の程度をみる指標となります。
 健康な人では、腎臓でエリスロポエチンという造血ホルモンがつくられますが、透析患者様ではこの造血ホルモンが少なくなるためどうしても貧血になります。ヘマトクリットを30〜33%に維持するように、人工的に合成されたエリスロポエチン製剤(商品名:エポジン、エスポー)を注射で補います。


ヘモグロビン(血色素・Hb)
  目標値
 10〜11 g/dl
 血液が赤く見えるのは、血球成分の大部分を占める赤血球の中にヘモグロビン(血色素)という赤い色素が含まれているからです。ヘモグロビン量をみることによって貧血の程度が分かります。
ヘモグロビン 1g/dlはほぼヘマトクリット3%に相当します。

 赤血球の中のヘモグロビンは鉄分と蛋白質から造られています。従いまして、鉄分が不足したり、食欲不振が続いて蛋白質を中心とした栄養が不足している場合は、いくらエリスロポエチンを注射で補充しても赤血球は造られないため貧血になります。

 栄養不良でないのにエリスロポエチンで貧血が改善しにくい場合、その原因のほとんどが鉄不足です。ということで次に鉄不足をチェックする検査について説明します。



鉄飽和率(TSAT)
  目標値
 20 %以上
 鉄飽和率は、血液検査で血清鉄と総鉄結合能(TIBC)というものを測定し計算で出します。20%以下なら鉄欠乏状態と考えられ、鉄分の補充を行います。
 当院では、鉄飽和率を月1回調べて鉄不足の監視を行っています。

29号メインページに戻る 29号メニューに戻る

フェリチン
  目標値 100 ng/ml以上
 血中のフェリチン濃度は、体内に貯蔵されている鉄分の量を反映します。100ng/ml 以下なら鉄欠乏状態と考えられます。
 当院では、血清フェリチンは2ヶ月に1回調べています。

 鉄不足が判明すれば鉄を補充することになりますが、鉄剤は経口投与では健康な人でも最大で20%が吸収されるにすぎず、透析患者様ではさらに吸収率が低く、個人差も大きいため注射による補充が基本となります。


体重増加率
  目標値
   1日あき ドライウエイトの5%以内
   2日あき ドライウエイトの3%以内
 「体重の増加」は、尿の出ない方にとっては体の中に水がたまったということで、心臓や血管に大きな負担をかけることになります。水分が体の中にたまりすぎると、「むくみ」・「血圧の上昇」などがあらわれ、さらに大量の水分がたまると「せきが出る」・「寝ると息苦しい」などの症状があらわれます。そこまでの症状が出なくても、いつも過剰に水がたまった状態でいたら結局心不全などの重い合併症に陥ります。
 また、たくさんたまった水を4〜5時間の透析でとろうとすると血圧が下がったり、足や手がつったり、胸苦しくなったりして非常につらい、しかも危険な透析になります。従いまして、当院では危険な大量除水は行わないことにしていますのでご注意いただきたいと思います。
 
 これらの合併症を起さないためにも体重の増加(水分の貯留)はできるだけ少なくしなくてはいけません。体重増加は2日あきの時でドライウエイトの5%以内、1日あきの時は3%以内を目標にしましょう。そのためには、食事以外の飲水量は、1日に体重1s当り12ml程度に抑えましょう。ドライウエイトが50sの人なら、1日の飲水量は600ml(およそコップ3杯程度)ということになります。ただし、ここでいう飲水量には、お茶、水、ジュース、牛乳、コーヒー、氷などすべての飲み物を含んでいますのでご注意ください。

 なお、塩分をとり過ぎるとのどが渇き、どうしても水分を多くとってしまいます。体重増加を抑えるには、塩分制限をすることがもっとも重要です。体重増加の多い方は、食事の塩分を少なくする工夫についての栄養指導をぜひ受けてください。

 塩分制限に関して皆様に注意していただきたいことがあります。それは、加工食品などのナトリウム表示のことです。水分制限のためには塩分制限が基本ですと何度も説明してきましたが、実を言いますと、のどの渇きの原因となっているのは塩分(食塩)の中のナトリウムです。高血圧の原因も食塩の中のナトリウムが原因ということもあり、食品の栄養表示基準では「塩分(食塩)」ではなく「ナトリウム」表示が義務付けられています。
 患者様の中には、塩分とナトリウムは同じものと誤解されている方もいるかもしれませんが、実際はその量には大きな違いがあります。食塩の量は、表示されているナトリウムの値を2.54倍して換算されます。たとえば、普通の大きさのインスタントカップ麺だとナトリウムはたいていの場合2gと表示されています。これは、塩分(食塩)に換算すると5.1gに相当します。以前から水分制限のために1日の塩分摂取量は5〜7g程度に抑えてくださいと何度も申し上げてきましたが、カップ麺1つでもう1日分の塩分をとってしまったことになります。たまには加工食品も食べることもあると思いますが、ナトリウム表示を見たらここで説明したことをぜひ思い出して参考にしてください。


インタクトPTH(i-PTH)

  
目標値 60 〜 180 pg/ml
 インタクトPTHとは、副甲状腺(上皮小体ともいいます)から分泌されるホルモンです。副甲状腺(上皮小体)は常に血液中のカルシウムの値を監視していて、血液中のカルシウム濃度が下がると、インタクトPTHを分泌し骨からカルシウムを溶かし出すことによって血液中のカルシウムを増加させます。
 しかし、血液中のカルシウムが低いあるいは血液中のリンが高い期間が長く続くと、副甲状腺がだんだん大きくなりホルモンを必要以上に分泌するようになります。この状態を副甲状腺機能亢進症といいます。血液検査でインタクトPTHの値が目標値の上限より高くなってきた場合は、副甲状腺機能亢進症になっているということを表します。
 
 副甲状腺機能亢進症になると、過剰に分泌されたインタクトPTHによって、骨が溶け骨折しやすくなったり、骨や関節が痛くなったりします。それ以上に問題なのは骨から溶け出したカルシウムがリンと一緒になって骨以外の部分、たとえば血管、心臓の弁、関節などにくっついていくことです。これを異所性石灰化といいます。特に血管や心臓の弁に異所性石灰化が起こると、心不全・脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などといった透析患者様の命を左右する重大な心血管系合併症の原因になります。

 副甲状腺機能亢進症にならないために、あるいはそれ以上悪くしないために、皆様にしていただきたいことはとにかくリンのコントロールです。副甲状腺機能亢進症が起こる引き金は、先ほども説明しましたように、カルシウムが低いあるいはリンが高い期間が続くということです。カルシウムが低い場合は薬で上げて調節することができますが、リンが高いことに関しては薬や透析での除去だけでは限界があり、皆様の食事制限がどうしても必要なのです。心臓や血管を守るために、つまり長生きをするためにはリンにはくれぐれも注意していただきたいと思います


29号メインページに戻る

29号メニューに戻る