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「ハナミズキ」
撮影:平成19年4月24日

皆様、お元気でしょうか。体調はいかがでしょうか。今年は暖冬のせいなのか、遅まきながら3月に入ってよりインフルエンザが流行し始めて、4月に入ってもなお猛威をふるっているようです。皆様どうか日頃より健康維持に充分留意されインフルエンザにかからないように、また風邪など引かないように御用心下さい。
桜の花の見頃もあっという間に終わり、さつきの美しい季節がやって来ようとしています。法皇の峰々もすっかり新緑で覆われて自然界に活気のみなぎるシーズンがまたやってまいりました。
三島クリニック透析室では今年は年内に皆様方のより良い透析のために設備的に大幅なグレードアップを予定しています。機器の更新を行い透析室内を電子化して仕事上のミスをなくし、しかも効率をあげてきめの細かい患者様のフォローができるような体制作りを目指すことにしています。大いに楽しみにしていただきたいと思います。
さて、今回の透析室ニュースは前号に引き続き検査データの見方についてであります。前回も申し上げましたように、検査結果は皆様方の健康度を反映するものでありますから、非常に大切であり繰り返し説明させていただきます。どうか検査の意味を正確に理解していただいて、御自身の健康維持の指針にしていただけたらと思っています。

理事長 溝渕 正行

 

「検査データの見方」について(Ⅱ)

今回も前回に引き続き検査データの見方について説明していきたいと思います。

ヘマトクリット(Ht)

目標値 30~33 %

血液全体量に対する赤血球の割合を、パーセントで表したものです。貧血の程度をみる指標となります。
健康な人では、腎臓でエリスロポエチンという造血ホルモンがつくられますが、透析患者様ではこの造血ホルモンが少なくなるためどうしても貧血になります。ヘマトクリットを30~33%に維持するように、人工的に合成されたエリスロポエチン製剤(商品名:エポジン、エスポー)を注射で補います。

 

ヘモグロビン(血色素・Hb)

目標値 10~11 g/dl

血液が赤く見えるのは、血球成分の大部分を占める赤血球の中にヘモグロビン(血色素)という赤い色素が含まれているからです。ヘモグロビン量をみることによって貧血の程度が分かります。
ヘモグロビン 1g/dlはほぼヘマトクリット3%に相当します。

赤血球の中のヘモグロビンは鉄分と蛋白質から造られています。従いまして、鉄分が不足したり、食欲不振が続いて蛋白質を中心とした栄養が不足している場合は、いくらエリスロポエチンを注射で補充しても赤血球は造られないため貧血になります。

栄養不良でないのにエリスロポエチンで貧血が改善しにくい場合、その原因のほとんどが鉄不足です。ということで次に鉄不足をチェックする検査について説明します。

 

鉄飽和率(TSAT)

目標値 20 %以上

鉄飽和率は、血液検査で血清鉄と総鉄結合能(TIBC)というものを測定し計算で出します。20%以下なら鉄欠乏状態と考えられ、鉄分の補充を行います。
当院では、鉄飽和率を月1回調べて鉄不足の監視を行っています。

 

フェリチン

目標値 100 ng/ml以上

血中のフェリチン濃度は、体内に貯蔵されている鉄分の量を反映します。100ng/ml 以下なら鉄欠乏状態と考えられます。
当院では、血清フェリチンは2ヶ月に1回調べています。

鉄不足が判明すれば鉄を補充することになりますが、鉄剤は経口投与では健康な人でも最大で20%が吸収されるにすぎず、透析患者様ではさらに吸収率が低く、個人差も大きいため注射による補充が基本となります。

 

体重増加率

目標値 1日あき ドライウエイトの5%以内 /2日あき ドライウエイトの3%以内

体重の増加」は、尿の出ない方にとっては体の中に水がたまったということで、心臓や血管に大きな負担をかけることになります。水分が体の中にたまりすぎると、「むくみ」・「血圧の上昇」などがあらわれ、さらに大量の水分がたまると「せきが出る」・「寝ると息苦しい」などの症状があらわれます。そこまでの症状が出なくても、いつも過剰に水がたまった状態でいたら結局心不全などの重い合併症に陥ります。
また、たくさんたまった水を4~5時間の透析でとろうとすると血圧が下がったり、足や手がつったり、胸苦しくなったりして非常につらい、しかも危険な透析になります。従いまして、当院では危険な大量除水は行わないことにしていますのでご注意いただきたいと思います。

これらの合併症を起さないためにも体重の増加(水分の貯留)はできるだけ少なくしなくてはいけません。体重増加は2日あきの時でドライウエイトの5%以内、1日あきの時は3%以内を目標にしましょう。そのためには、食事以外の飲水量は、1日に体重1㎏当り12ml程度に抑えましょう。ドライウエイトが50㎏の人なら、1日の飲水量は600ml(およそコップ3杯程度)ということになります。ただし、ここでいう飲水量には、お茶、水、ジュース、牛乳、コーヒー、氷などすべての飲み物を含んでいますのでご注意ください。
なお、塩分をとり過ぎるとのどが渇き、どうしても水分を多くとってしまいます。体重増加を抑えるには、塩分制限をすることがもっとも重要です。体重増加の多い方は、食事の塩分を少なくする工夫についての栄養指導をぜひ受けてください。

塩分制限に関して皆様に注意していただきたいことがあります。それは、加工食品などのナトリウム表示のことです。水分制限のためには塩分制限が基本ですと何度も説明してきましたが、実を言いますと、のどの渇きの原因となっているのは塩分(食塩)の中のナトリウムです。高血圧の原因も食塩の中のナトリウムが原因ということもあり、食品の栄養表示基準では「塩分(食塩)」ではなく「ナトリウム」表示が義務付けられています。
患者様の中には、塩分とナトリウムは同じものと誤解されている方もいるかもしれませんが、実際はその量には大きな違いがあります。食塩の量は、表示されているナトリウムの値を2.54倍して換算されます。たとえば、普通の大きさのインスタントカップ麺だとナトリウムはたいていの場合2gと表示されています。これは、塩分(食塩)に換算すると5.1gに相当します。以前から水分制限のために1日の塩分摂取量は5~7g程度に抑えてくださいと何度も申し上げてきましたが、カップ麺1つでもう1日分の塩分をとってしまったことになります。たまには加工食品も食べることもあると思いますが、ナトリウム表示を見たらここで説明したことをぜひ思い出して参考にしてください。

 

 

インタクトPTH(i-PTH)

目標値 60 ~ 180 pg/ml

インタクトPTHとは、副甲状腺(上皮小体ともいいます)から分泌されるホルモンです。副甲状腺(上皮小体)は常に血液中のカルシウムの値を監視していて、血液中のカルシウム濃度が下がると、インタクトPTHを分泌し骨からカルシウムを溶かし出すことによって血液中のカルシウムを増加させます。
しかし、血液中のカルシウムが低いあるいは血液中のリンが高い期間が長く続くと、副甲状腺がだんだん大きくなりホルモンを必要以上に分泌するようになります。この状態を副甲状腺機能亢進症といいます。血液検査でインタクトPTHの値が目標値の上限より高くなってきた場合は、副甲状腺機能亢進症になっているということを表します。

副甲状腺機能亢進症になると、過剰に分泌されたインタクトPTHによって、骨が溶け骨折しやすくなったり、骨や関節が痛くなったりします。それ以上に問題なのは骨から溶け出したカルシウムがリンと一緒になって骨以外の部分、たとえば血管、心臓の弁、関節などにくっついていくことです。これを異所性石灰化といいます。特に血管や心臓の弁に異所性石灰化が起こると、心不全・脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などといった透析患者様の命を左右する重大な心血管系合併症の原因になります。

副甲状腺機能亢進症にならないために、あるいはそれ以上悪くしないために、皆様にしていただきたいことはとにかくリンのコントロールです。副甲状腺機能亢進症が起こる引き金は、先ほども説明しましたように、カルシウムが低いあるいはリンが高い期間が続くということです。カルシウムが低い場合は薬で上げて調節することができますが、リンが高いことに関しては薬や透析での除去だけでは限界があり、皆様の食事制限がどうしても必要なのです。心臓や血管を守るために、つまり長生きをするためにはリンにはくれぐれも注意していただきたいと思います。

 

スタッフからの投稿「初めまして」 臨床工学技士 野村 祐介

4月から三島クリニックで勤めさせていただくことになりました野村祐介と言います。私は岡山県にある川崎医療短期大学に3年間通い、今年3月に卒業しました。
今は、新卒で臨床経験もないので分からないことや戸惑うことばかりで臨床現場での厳しさに直面している毎日です。
なぜ、私が透析業務に携ろうと考えたかと言いますと、臨床工学技士の業務の中で透析業務が一番患者様と接する機会が多く、より臨床的であったからです。ここ三島クリニックで患者様と信頼関係を築き、臨床的な面と工学的な面から患者様をサポートし、頼りになる臨床工学技士と言われるようになりたいと思っています。
まだまだ勉強不足で患者様やスタッフの皆さんに対して何一つ力になれていませんが、一日も早く力になれるよう努力し、患者様からの信頼を得られるよう頑張ります。
いろいろご迷惑をおかけしますが、先輩スタッフの方々や患者様から学ばせていただき、それをどんどん吸収していきたいと思いますのでこれからよろしくお願いいたします。

 

患者様からの投稿「6年半を振り返って」 守屋 直栄 (透析歴6年6ヶ月)

今から10年程前になりますか、自分の体調がおかしいと自覚したのは…。まず、それまで一晩眠ればとれていた疲れが二日目三日目まで残るようになり、階段を昇ったり急な坂を登ったりすると、とても息切れがしてしばらく動けなかったり、夕方頃になると足の甲や足首が大きく膨らんでいることもしばしばありました。しかし、普段の生活や仕事に差しつかえるほどでもないのと、とても忙しく病院へ行く間もありませんでしたのでそのまま様子をみてました。
そうこうするうち平成10年3月中旬、車を運転中突然右半身の自由がきかなくなりました。脳梗塞でした。幸いにも早く治療を開始したため、深刻な事態にはならず2ヶ月ほどで退院することができました。しかし、前述の体調不良は治まらず、しばらく後にその原因が腎機能の低下によるものだと分かった時には、もう透析をするしかない手遅れの状態でした。そして結局、平成12年10月から三島クリニックにおいて透析を開始することになりました。
初めて三島クリニックの透析室に案内された時には少なからず衝撃を受けたことを思い出します。ズラッと並んだベッドと機材、そして空いているベッドがないほどの透析患者の数。自分もこれから一生、週3回、ここで5時間ほどもかかる透析治療を受けなければいけないのだと…。
当初は、とにかく時間のたつのが遅く感じられ透析が終わるのを待ちわびていました。また、足の痙攣が断続的におき随分悩まされました。全身の痒みもひどく、時には夜通しの時もありました。そして、何よりつらいのは食事制限でした。仕事上どうしても不規則で外食になりがちでしたから。それでも最初の1年ほどは排尿があり問題なかったのですが、やがて尿意を催さなくなり、最近ではほとんど無尿になりました。そうなると、リン値、カリウム値等の数字が大きくなり体重のコントロールも難しくなりました。
最初は透析を受けながら仕事をしていましたが、どうしても無理をしてしまい、また仕事も中途半端になるため、悩みましたが透析開始から1年過ぎに会社を辞し、治療に専念することにしました。3年ほどするとやっと慣れてきたのか、あるいは昼間の透析に変わったのが良かったのか、余裕ができ透析のない日にはゆったり散歩などして過ごしました。昨年からは生活のこともあり、家でできる簡単な軽作業の仕事を見つけて、無理のないよう注意しながら毎日を過ごしております。
透析を始めてから今年で早7年目となります。最初の頃は、何をするのも億劫で前向きに考えが向かわず、暗い日々を送っていました。最近になって明日に向かってという気持ちを持つようになりました。思えば以前と比べて随分身体もいうことがきくようになり、普通の人と変わらぬようになりました。それもこれも院長先生を始めスタッフの皆様が我々患者を暖かく見守り支えてくださったお蔭と感謝しております。今後ともよろしくお願い致します。

 

栄養室より 管理栄養士 高石 美由紀

南蛮漬 (レシピ)

材料

魚60g(とり肉でもおいしいです。)
こしょう 片栗粉 油
(A) 玉ねぎ20g,人参10g,ピーマン5g
レモン1/16枚

調味料
酢6g,砂糖3g,しょうゆ4g,みりん3g

 

調理方法

①(A)の野菜は、細かいせん切にしてそれぞれゆでこぼす。
② ボールに調味料をあわせ①を加える。
③ こしょうを振っておいた魚に片栗粉をつけて油で揚げ、熱いうちに②に漬け込む。
④ 魚の上に野菜を盛りつけレモンを飾る。

エネルギーを上げるための油料理も酢を使うことによりさっぱりと食べやすくなります。
魚類は動脈硬化症を防ぐ多価不飽和脂肪酸に富み、また筋肉などの構成成分である蛋白源としても重要なすぐれた食品です。