「検査データの見方」について(V)

                                    
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 今回も引き続き検査データの見方について説明していきたいと思います。
 前回までの検査データは、定期検査後にお渡ししているレーダーチャートや、今までの透析室ニュースでも何度か触れてきた項目でしたので、皆様もわりとなじみのある検査だったかもしれません。今回は、当院の定期検査で全員の方に行っている項目のうち、問題がない患者様にはあまりお知らせしていない検査について簡単に説明していきます。
 なお、御自身の検査データについて詳しく知りたい方は、いつでもお気軽にお申し出ください。ご希望の方には全ての検査値の推移表をお渡しのうえ説明させていただきます。

尿素窒素除去率
  目標値 60%以上

クレアチニン除去率
  目標値 60%以上

 透析前後で採血した尿素窒素とクレアチンの値から、それぞれの毒素が透析をすることによってどれだけ除去できたかを計算し、%で表したものです。60%以上ならば効率のよい透析ができたと考えられます。



KT/V
  目標値 1.2以上

サフランモドキ
撮影:2007.9.3
 ケイ・ティー・オーバー・ブイと読みます。少し難しいですが、Kはダイアライザーの尿素を浄化する能力、Tは透析時間、Vは体重の約60%といわれる水分量(総体液量)を表わしています。KT/Vの値は、透析前後の尿素窒素の値を元に計算で出します。これは、透析の効率(透析によってどれだけ血液が浄化されたか)を表す指標の一つで、標準化透析量とも言われます。
 
例えば、KT/Vが1ということは、簡単に言うと1回の血液透析で体全体が1回通りきれいになった(浄化された)ということを表わします。さらに数字が大きいほど血液がよりきれいになったということです。
 当院ではKT/Vの目標値は1.2以上としていますが、できれば1.6以上が望ましいと考えています。
 KT/V(標準化透析量)の数値が低い場合は、透析時間を延長したり、血流量を上げたり、クリアランス(毒素の除去能力)の大きいダイアライザーに変えるなどの対策を行います。

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TAC−BUN
  目標値 60mg/dl以下

 タック・ビー・ユー・エヌと読みます。これは1週間の血液中の尿素窒素(BUN)の平均濃度のことです。食事中のたん白質が分解されると、体内に尿素窒素が蓄積して、2日あき(月水金透析の方では月曜日、火木土透析の方では火曜日)の透析前が最も尿素窒素の濃度が高くなります。透析をすると尿素窒素は除去されるので透析後は低下しますが、次の透析までにまた上昇します。このように透析患者さんの血液中の尿素窒素濃度はのこぎりの歯のように上下をくりかえしています。

 従来は、最も高い時の尿素窒素の値(月曜日の透析前あるいは火曜日の透析前)だけをみてコントロールの指標としてきました。しかし、これには全体像が反映されていません。そこで生まれたのが一週間の尿素窒素の値を平均化した値を指標にする考え方です。それがTAC−BUNです。
 TAC−BUNの計算方法については、月水金透析の方でしたら、月曜日の透析後と水曜日の透析前の尿素窒素の値の平均をすると、ほぼ一週間の尿素窒素の平均値になることが分かっています。このため水曜日あるいは木曜日(火木土透析の方)の透析前に採血をさせていただいています。
 TAC−BUNの目標値は60mg/dl以下ですが、できれば45mg/dl以下が理想的です。しかし、TAC−BUNが低ければ低いほど良いというわけではありません。たん白質摂取量が少ないと当然TAC−BUNは低くなりますから、たん白質摂取量と合わせて判断することが必要です。つまりたん白質摂取量が十分で、なおかつTAC−BUNが低いのが良い透析なのです。


PCR(たん白異化率)
  目標値 0.8〜1.4  g/kg(体重)/日

 ピー・シー・アールと読みます。日本語ではたん白異化率といって、本来は1日でどれだけのたん白質が分解されて尿素になるかという値のことですが、安定した透析患者さんの場合には、たん白異化率=たん白質摂取量という関係があります。従いまして、たん白異化率をみることによって1日あたり体重1kgにつきどれだけのたん白質を摂取したかが分かります。
 たん白異化率は、月曜日の透析後と水曜日の透析前の尿素窒素の値から計算して出します。火木土透析の方の場合には、火曜日の透析後と木曜日の透析前の尿素窒素の値からということになります。
 たん白異化率の目標値は、0.8〜1.4ですが、できれば1.2以上が理想的です。1.2以上ということは、1日に体重1kgあたり1.2g以上ということですから、体重が50kgの方なら1日に60g以上のたん白質摂取が、また体重が60kgの方なら1日に72g以上のたん白質摂取ということになります。たん白質の摂取が不足すると、長期的には栄養障害を引き起こして長生きできません。体重が増えることを心配して食事を減らす方がおられますが、それは間違いです。水分を減らして適正量のたん白質をしっかりとりましょう。

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サルスベリ
撮影:2007.9.1
 ここまで当院が定期的に行なっている透析の効率をみる検査を紹介しましたが、良い透析が行なわれているかどうかを判断するためには1つの項目だけ、例えば除去率だけをみるのでは無理があります。本当の透析の質をみるためには、たん白異化率(たん白摂取量)を含めたいくつかの指標を総合的にみて判断しないといけません。
 皆様の中には透析の質を実感されていない方もあると思いますが、透析の質の良し悪しは短期間では表れないのでして、年単位でみるとその差は大きなものになります。当院は透析歴の長い方がたくさんいらっしゃいます。それはもちろん患者様自身の自己管理によるところが大きいのですが、透析液の清浄化も含め透析の質を高めてきたことも一因ではないかと自負しております。
 先ほど説明しましたとおりTAC−BUNとPCRは、週の初めの透析後と週の中日の透析前の採血が必要です。皆様もご存知のように透析治療における検査は包括化(検査をどれだけしても施設に入ってくる金額は同じ)になっていますので、検査回数を増やせばそれだけ施設としての収入が減る仕組みになっています。そのため、2日あきの透析前後の採血はどこの透析施設でも行われていますが、その次の透析前まで採血している施設は少ないのが現状です。
 引き続き、定期検査の項目の説明を続けます。


白血球数(WBC)
  目標値 3900〜9800
 白血球数の増加は主に感染症の存在を示します。



赤血球数(RBC)
  目標値 300万以上

 赤血球数は貧血の程度を示します。



血小板数(PLT)
  目標値 12万以上

 血小板数が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなります。 骨髄の働きが悪かったり、慢性的に肝臓が悪いと減少することがあります。

 定期検査で行っている検査は、あと13項目ありますが、それらについては次回に説明させていただきます。


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