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残暑

「サンパチェンス」
撮影:平成19年9月4日

暦の上では9月に入りましたのに連日厳しい暑さが続いています。皆様、体調はいかがでしょうか。
地球温暖化のためか、今年の8月の殆どの日が最高気温30度以上の真夏日を記録するという異常気象(ヒートアイランド現象)となった今年の夏でした。ヨーロッパアルプスの氷河が、あるいは北極の氷が溶けて少なくなり、南太平洋の島々が海中に沈みはじめるなど恐ろしい現象が次々と発生し、このまま進むと地球はどうなってしまうのだろうという不安にかられます。ぜひ炭酸ガスの発生を減らす運動に協力して、少しでも温暖化のスピードを遅らせたいものです。
一方わが国の政治に目をやりますと、先だっての参議院議員選挙前後からの政府の混乱ぶりは目を覆うばかりで、日本の政治はどうなるのだろうと心配になってしまいます。ぜひ次の選挙では頼りがいのある代表を選んで、とりあえず医療界の改善に尽くして欲しいと思います。
当院の透析室の話に戻りますが、平成20年上半期には以前に皆様方に御約束しました透析室の電子化に着手できると考えています。大いに御期待下さい。また、恒例の講演会を今年12月初めに「透析患者さんの日常生活 自己管理」といった題名で行う予定です。講師は東京、埼玉で御活躍中の北岡建樹先生の予定です。
どうか残暑に負けず頑張って下さい。

理事長 溝渕 正行

 

「検査データの見方」について(Ⅲ)

今回も引き続き検査データの見方について説明していきたいと思います。
前回までの検査データは、定期検査後にお渡ししているレーダーチャートや、今までの透析室ニュースでも何度か触れてきた項目でしたので、皆様もわりとなじみのある検査だったかもしれません。今回は、当院の定期検査で全員の方に行っている項目のうち、問題がない患者様にはあまりお知らせしていない検査について簡単に説明していきます。
なお、御自身の検査データについて詳しく知りたい方は、いつでもお気軽にお申し出ください。ご希望の方には全ての検査値の推移表をお渡しのうえ説明させていただきます。

尿素窒素除去率

目標値 60%以上

クレアチニン除去率

目標値 60%以上
透析前後で採血した尿素窒素とクレアチンの値から、それぞれの毒素が透析をすることによってどれだけ除去できたかを計算し、%で表したものです。60%以上ならば効率のよい透析ができたと考えられます。

 

KT/V

目標値 1.2以上

ケイ・ティー・オーバー・ブイと読みます。少し難しいですが、Kはダイアライザーの尿素を浄化する能力、Tは透析時間、Vは体重の約60%といわれる水分量(総体液量)を表わしています。KT/Vの値は、透析前後の尿素窒素の値を元に計算で出します。これは、透析の効率(透析によってどれだけ血液が浄化されたか)を表す指標の一つで、標準化透析量とも言われます。
例えば、KT/Vが1ということは、簡単に言うと1回の血液透析で体全体が1回通りきれいになった(浄化された)ということを表わします。さらに数字が大きいほど血液がよりきれいになったということです。
当院ではKT/Vの目標値は1.2以上としていますが、できれば1.6以上が望ましいと考えています。
KT/V(標準化透析量)の数値が低い場合は、透析時間を延長したり、血流量を上げたり、クリアランス(毒素の除去能力)の大きいダイアライザーに変えるなどの対策を行います。

サフランモドキ
撮影:2007.9.3

 

TAC-BUN

目標値 60mg/dl以下
タック・ビー・ユー・エヌと読みます。これは1週間の血液中の尿素窒素(BUN)の平均濃度のことです。食事中のたん白質が分解されると、体内に尿素窒素が蓄積して、2日あき(月水金透析の方では月曜日、火木土透析の方では火曜日)の透析前が最も尿素窒素の濃度が高くなります。透析をすると尿素窒素は除去されるので透析後は低下しますが、次の透析までにまた上昇します。このように透析患者さんの血液中の尿素窒素濃度はのこぎりの歯のように上下をくりかえしています。
従来は、最も高い時の尿素窒素の値(月曜日の透析前あるいは火曜日の透析前)だけをみてコントロールの指標としてきました。しかし、これには全体像が反映されていません。そこで生まれたのが一週間の尿素窒素の値を平均化した値を指標にする考え方です。それがTAC-BUNです。
TAC-BUNの計算方法については、月水金透析の方でしたら、月曜日の透析後と水曜日の透析前の尿素窒素の値の平均をすると、ほぼ一週間の尿素窒素の平均値になることが分かっています。このため水曜日あるいは木曜日(火木土透析の方)の透析前に採血をさせていただいています。
TAC-BUNの目標値は60mg/dl以下ですが、できれば45mg/dl以下が理想的です。しかし、TAC-BUNが低ければ低いほど良いというわけではありません。たん白質摂取量が少ないと当然TAC-BUNは低くなりますから、たん白質摂取量と合わせて判断することが必要です。つまりたん白質摂取量が十分で、なおかつTAC-BUNが低いのが良い透析なのです。

 

PCR(たん白異化率)

目標値 0.8~1.4  g/kg(体重)/日
ピー・シー・アールと読みます。日本語ではたん白異化率といって、本来は1日でどれだけのたん白質が分解されて尿素になるかという値のことですが、安定した透析患者さんの場合には、たん白異化率=たん白質摂取量という関係があります。従いまして、たん白異化率をみることによって1日あたり体重1kgにつきどれだけのたん白質を摂取したかが分かります。
たん白異化率は、月曜日の透析後と水曜日の透析前の尿素窒素の値から計算して出します。火木土透析の方の場合には、火曜日の透析後と木曜日の透析前の尿素窒素の値からということになります。
たん白異化率の目標値は、0.8~1.4ですが、できれば1.2以上が理想的です。1.2以上ということは、1日に体重1kgあたり1.2g以上ということですから、体重が50kgの方なら1日に60g以上のたん白質摂取が、また体重が60kgの方なら1日に72g以上のたん白質摂取ということになります。たん白質の摂取が不足すると、長期的には栄養障害を引き起こして長生きできません。体重が増えることを心配して食事を減らす方がおられますが、それは間違いです。水分を減らして適正量のたん白質をしっかりとりましょう。

サルスベリ
撮影:2007.9.1

ここまで当院が定期的に行なっている透析の効率をみる検査を紹介しましたが、良い透析が行なわれているかどうかを判断するためには1つの項目だけ、例えば除去率だけをみるのでは無理があります。本当の透析の質をみるためには、たん白異化率(たん白摂取量)を含めたいくつかの指標を総合的にみて判断しないといけません。
皆様の中には透析の質を実感されていない方もあると思いますが、透析の質の良し悪しは短期間では表れないのでして、年単位でみるとその差は大きなものになります。当院は透析歴の長い方がたくさんいらっしゃいます。それはもちろん患者様自身の自己管理によるところが大きいのですが、透析液の清浄化も含め透析の質を高めてきたことも一因ではないかと自負しております。
先ほど説明しましたとおりTAC-BUNとPCRは、週の初めの透析後と週の中日の透析前の採血が必要です。皆様もご存知のように透析治療における検査は包括化(検査をどれだけしても施設に入ってくる金額は同じ)になっていますので、検査回数を増やせばそれだけ施設としての収入が減る仕組みになっています。そのため、2日あきの透析前後の採血はどこの透析施設でも行われていますが、その次の透析前まで採血している施設は少ないのが現状です。
引き続き、定期検査の項目の説明を続けます。

 

白血球数(WBC)

目標値 3900~9800
白血球数の増加は主に感染症の存在を示します。

 

赤血球数(RBC)

目標値 300万以上
赤血球数は貧血の程度を示します。

 

血小板数(PLT)

目標値 12万以上
血小板数が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなります。 骨髄の働きが悪かったり、慢性的に肝臓が悪いと減少することがあります。

定期検査で行っている検査は、あと13項目ありますが、それらについては次回に説明させていただきます。

 

TOPIC 「研究発表について」

第18回愛媛人工透析研究会(平成19年8月25日、新居浜にて開催)において、臨床工学技士の田邉三恵、看護師の吉川基樹が研究成果を発表しました。

  • 田邉三恵

演題 「微生物検出用シート状R2A培地の評価」
発表要旨
最近は透析液の清浄化に関して、エンドトキシンに加えて生菌の測定も重要視されるようになってきている。今回、従来より生菌数測定に使用されている(容器型)寒天培地と新しいシート状培地(ニプロ社製:シートチェック-R2A)を使用し生菌検出について比較検討した。シートチェック-R2A培地は培養温度により培養期間に差がみられるが、簡便で生菌検出に有用と考えられた。

 

  • 吉川基樹

演題 「ポリエーテルスルホン膜PES-SαとPES-Sβの溶質除去性能
発表要旨
PES-SαとSβはともにダイアライザー機能分類Ⅴ型のダイアライザーであるが、その除去特性には違いがみられた。その特性を理解し、使用目的に応じた選択が必要であると考えられた。

第41回四国透析療法研究会(平成19年10月7日、徳島にて開催)において、看護師の吉川基樹が研究成果を発表する予定です。

 

演題 「Ⅴ型透析器の溶質除去性能比較」
発表要旨 
PES-Sα、PES-Sβ、APS-Eの3種類のⅤ型透析器における尿素窒素、クレアチニン、尿酸、リン、β2MG、α1MGのクリアランス、除去率、除去量、クリアスペース、アルブミン漏出量を測定し比較検討した。

 

患者様からの投稿「私にとってのこの9年間」 吉岡 憲生 (透析歴9年1ヶ月)

透析導入から丸9年が経過しました。その間一番大きな変化と言えば、会社を退職したことです。会社は透析治療を受けながらの勤務に理解を示してくれましたが、私自身が治療と勤務の両立に失敗してしまい、導入後3年ほどの勤務で退職となりました。今思えば、体よりも精神的に参っていたようでした。
導入後の身体的な経過は、シャントのつまりが2度ほどありましたが、すぐに溝渕先生に治療していただいて、大事に至ることなく回復できました。
現在までの透析期間中、私にとっての重大な課題は食事で摂取するリンの管理と、水分摂取による体重増加の制限でした。リンの方は、栄養士さんやスタッフの方々の指導により私の知識も少しずつ増えてゆき、何とか管理目標値内におさまっています。水分管理については、本来飲み物の好きな性分ですので毎回ひどく体重を増やしていました。塩辛い食べ物を好んでいたことも水分のとり過ぎの原因になっていたようです。それともう一つ、これは私だけかも知れませんが、タバコを吸っていると飲み物が欲しくなりました。
最近になって、少しずつですが水分増加を抑えられるようになってきました。タバコは1年以上前にやっとやめました。飲み物が欲しくなると、何回かに1度はアメなどを口に入れて気を紛らわせます。塩辛い物は、全く取らない訳にもいかないので、食品の成分表示を見たりして取捨選択しています。もちろん栄養士さんやスタッフの方々のご指導もいた
だいて、避けるべき食べ物などを少しずつ覚えてきました。
これからは、今まで通り食事や水分の管理を続けるのは当然ですが、基本的な体力を少しでも落とさないようにしたいと思っています。ここ最近は全くと言っていいほど運動をしていないので、まずは散歩のような軽い運動から始めようと思っています。
溝渕先生、スタッフの皆様、いつもありがとうございます。これからもご指導よろしくお願い致します。

 

栄養室より

管理栄養士
介護予防運動指導員(栄養室) 高石 美由紀
介護予防運動指導員(物療室) 外山 早苗

 

口腔(こうくう)体操を始めてみませんか!
~一生おいしく楽しく食べるために~

最近、お茶や汁物などでむせることはありませんか。
口唇(くちびる)の周りの筋肉(口輪筋)や舌の筋肉をきたえて、嚥下(えんげ)能力(ごっくんと飲み込むこと)を向上させ、おいしく楽しく安全にごはんを食べられるよう口腔体操を始めましょう。

今回はその一つとして次の体操をご紹介します。
パ・タ・カ・ラ体操

方法  できるだけ大きな声を出しながら
「パ、パ、パ・タ、タ、タ・カ、カ、カ・ラ、ラ、ラ」
「パタカラ、パタカラ、パタカラ」(これを5回繰り返します。)

の音は両唇音といい、口輪筋をきたえます。
(口輪筋は食べこぼしにも関係があります。)
の音は歯茎音といい、舌の先をきたえます。
(タと発音した時に舌の先が歯茎に当たっているのがわかりますか?)
の音は軟口蓋音(なんこうがいおん)といい、舌の根元をきたえます。
の音は硬口蓋音(こうこうがいおん)といい、舌全体をきたえます。
食事の前にこの体操をする習慣をつけて毎日おいしくごはんを食べましょう。
(デイサービスなどでも口腔体操をするところが増えてきています。)