リンについての話

            
36号メインページに戻る

 リンは本来、骨や細胞あるいは遺伝子の重要な成分で、体を動かすエネルギーを作るのにも必要な成分です。しかしながら、透析患者さんでは、腎臓からのリン排泄ができないため、どうしても高リン血症になってしまいます。この高リン血症が長期透析をしていく上で重大な合併症を引き起こします。

 「高リン血症がなぜいけないのか」についての話を始めると非常に長くなり、分かりにくい部分も多くなりますので、今回は結論だけをぜひ覚えてください。

高リン血症になると血管の石灰化(動脈硬化)が起こります。
 高リン血症になると血管にカルシウムとリンが沈着して、石灰化(動脈硬化)を起こします。本来、カルシウムは骨や歯に沈着しますが、体の中のリンが過剰になるとカルシウムと結合して、骨や歯以外の様々なところにハイドロキシアパタイトとして沈着してしまうのです。
 一般的な動脈硬化では、血液中のコレステロールや脂肪などが血管に沈着しますが、透析患者さんではこれらに加えて石灰化という危険因子がプラスされるため、動脈硬化が進行しやすい状態になっています。

 硬くなった血管では充分な量の血液を送ることができません。

血管が石灰化して、動脈硬化が進行すると心血管疾患を引き起こします。
 心血管疾患とは、主に
狭心症心筋梗塞心不全不整脈脳梗塞脳出血などのことをいい、いずれも生命にかかわる疾患です。
 また、
閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)が起きることもあります。閉塞性動脈硬化症では、下肢の動脈が詰まり、冷感、間欠性跛行(かんけつせいはこう→歩くと下肢が痛くなる)や安静時にも痛みが生じたりします。
 閉塞性動脈硬化症により足の血流が極端に低下すると壊疽(えそ→からだの組織の一部分が死んだ状態になること)を起こします。足の壊疽がひどくなると足を切断しなければならない場合もあります。

高リン血症の予防には、「リンの摂取を控える(リンを多く含む食品をなるべく避ける)・十分な透析(一回の透析に時間をかけるか、または回数を増やす)を行い血液中のリンを除去する・リン結合剤(食事中のリンを体内に吸収させないお薬)を必ず服用する」ことが必要です。

現在使用されているリン結合剤
カルタン(沈降炭酸カルシウム)
○カルシウムの補給に役立つ。
○ビタミンD製剤と一緒に服用すると高カルシウム血症になりやすい。

レナジェル(塩酸セベラマー)
○カルシウムもアルミニウムも含まない。
○ビタミンD製剤と一緒に服用しても高カルシウム血症になりにくい。
○リン吸着力はやや弱い。
○お腹の中で膨らむので、腹部膨満感や便秘が起こりやすい。

ホスレノール(炭酸ランタン)
○カルシウムもアルミニウムも含まない。
○ビタミンD製剤と一緒に服用しても高カルシウム血症になりにくい。
○リン吸着力は強い。
○噛砕いて服用する薬なので、水なし、あるいは少量の水で服用できる。
○はき気、おうと、便秘などの副作用が起きることがある。
(便秘は他のリン結合剤に比較して少ないといわれている)

 どのリン結合剤も食事直後に服用してください。
 リン結合剤は胃の中で食物と交じり合って、食物中のリンと結合することによってリンを便とともに体外へ排泄させる薬です。

 カリウムと違って、リンは高くても直ちに生命に危険があるというものではありませんが、リンをコントロールすることは心臓や血管を守るために非常に重要なことで、それが長生きにつながるということをご理解いただき、リンにはくれぐれも注意してください。



36号メインページに戻る

36号メニューに戻る

透析患者さんのためのインフルエンザ対策


 6月18日現在、新型インフルエンザの国内感染者は741人となりました。高温多湿に弱いとされるウイルスですので、この先日本では徐々に終息に向かう可能性があります。
 しかし、世界的に見れば現在においても感染者数は増加しており、特にこれから冬を迎える南半球において増加が著しいため、日本においても秋以降の第2波到来を危ぶむ声も聞こえています。

 新型インフルエンザに対する基本的な対策について、透析医学会が作成している「新型インフルエンザ対策啓発用資料」を参考にしてまとめました。

「なめてはダメ、しかし恐れすぎてもダメ 
     正しい知識を持って確かな対策を!」

    (透析医学会、透析患者における新型インフルエンザ対策合同会議)


かからないようにするための大切な予防策

① 感染症が流行している場所に行かない。
人ごみに出歩かない。
やむを得ず外出する際はマスク着用。(マスクである程度の飛沫等は捕捉されます。)

② 手洗い・うがいを着実に頻回行う。
石鹸液を使い温水で20秒、手を洗いましょう。
石鹸と水が利用できない場合、アルコールベースの手拭きないしはジェルタイプの速乾性手指消毒薬でもいいです。

③ 栄養や睡眠を十分にとり体調を整える。

④ 適度な湿度を保つ。
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、十分な湿度を保つことも効果的です。

咳エチケット
咳をする時、口と鼻を押さえましょう。

・咳やくしゃみをする時、ティシュペーパーを使って口や鼻を押さえましょう。
 (紙がない時は二の腕越しに!)
・使い終わったティシュはゴミ箱へ。
・咳やくしゃみなどの症状がある場合は、
 他の人にうつさないためにマスクをしましょう。

咳やくしゃみをした後、手洗いを!

かかってしまったら
   

タミフル(抗インフルエンザ薬)

診断がついたら、タミフルを1回のみます。
腎臓で捨てられる薬なので1回の内服で健腎者が毎日のんだ時と同じように効きます。透析で除去されますが、透析後もまだ十分な血中濃度が保てます。その後、1日2回朝晩、体温をつけてください。次の透析までの熱の加減でもう1回のむかどうか決まります。(残腎機能の差による)
タミフル以外の抗インフルエンザ薬には透析患者さんに対するデータがなく、副作用の問題もあり透析患者さんには使用しません。

かかった時の自宅療養のしかた
① 安静を保ち、保温しましょう。
病気を治しているのはあなたの身体です。無理は禁物です。

② うがい・手洗いをしましょう。
ウイルスの入り口は、口です。のどの洗浄自体に効果があります。
せきや鼻水には大量のウイルスが入っていて、これを自分の手で拾い口に運ぶ方が、空気伝播より数百倍もウイルス量が多いので、手を介して広がります。うがい・手洗いで2次3次の感染を防ぎましょう。
手ぬぐいを分けると、同居している人にうつりにくくなります。

③ マスクを着用しましょう。
このウイルスは湿気に弱いので、のどの中で広がりにくくなります。他の人にうつさないためにも有効です。

うつさないようにするための大切な予防策
 自宅で体調不良、高熱が出た時は、当院に電話で連絡して、
  指示を受けてください。

 体調が悪い時は、透析前に診察を受けてください。

 透析中に気づいた時は、すぐにお申し出ください。


36号メインページに戻る

36号メニューに戻る

患者様からの投稿

「ゼロからの出発」

            
 
      石川 保 透析歴27年(途中移植8年)

                          

 今年の四月から三島クリニックでお世話になることになりました。ここに来てまず透析の医療水準の高さに驚きました。また先生をはじめスタッフの方々のきめ細かな心配りにも、大変感謝しています。
 自分は透析を始めてもう27年(移植8年)になりました。順調だった身体も、最近では膝と肘の関節炎に悩まされています。でもなんとかやってこれたのは、27年前のある出来事があったからかもしれません。
 当時入院していた三豊総合病院で透析導入となり、将来に対して絶望と不安の中で、自暴自棄になっていました。何をする気もなく何日か過ぎ、ある時病院のロビーでぼんやり外を眺めていました。すると「どこが悪いんな?」と声をかけてきたのは、見知らぬおじいさんでした。「腎臓です。」「若いのにそんなに悪いんな?」「悪いなんてもんじゃないよ。透析やから。」とぶっきらぼうに答えました。すると「それなら、それ以上悪くなりようがないな。」と言われ、自分も「そうや、これ以上マイナスにはならんよ。」と返したら、ちょっとおかしくなって笑ってしまいました。おじいさんがその場からいなくなって、今笑ったことで少しだけ気が楽になったように感じました。そして自分の「これ以上マイナスにならん。」と言った言葉を何度も想い返していました。
 何もかも失ったらそこがゼロ。マイナスにならなければゼロからまたやり直せばいいのかな。生きて人生やってたら、ひとつふたつと築けることもあるのかな。とか考えたりしていました。それから透析治療にも前向きに向きあえた気がします。あの時ぶっきらぼうに答えた自分に、機転のきいた言葉をかけてくれたおじいさん。今でも感謝しています。


36号メインページに戻る

36号メニューに戻る

「第54回 日本透析医学会学術集会に参加して」


                             臨床工学技士  野村 祐介


 先日、6月5日~7日に横浜で開催された日本透析医学会学術集会に参加してきました。本学会は年に1度行われ、透析関連に従事する医師や看護師、臨床工学技士などが日本全国から集まる、透析関連の学会では最大規模の学会で、各病院、施設で研究した臨床データや新技術、新薬などについての最新の報告や情報を得ることができます。
 当院も毎年本学会に参加しており、今年も当院で研究した臨床データの演題が採用され、今回私が発表をしてきました。題名は「リクセルとon-line HDF併用療法によるβ2-MG除去量の検討」というタイトルで、簡単に説明すると、「on-line HDF」という特殊な透析法に加えて、「リクセル」とよばれるβ2-MG吸着器を取り付けた血液浄化法を実施し、透析アミロイド症の原因物質である「β2-MG(ベータ2ミクログロブリン)」が一度の透析で「ろ過」と「吸着」によってそれぞれどれくらいの量取り除かれたかということを調べました。
 今回、私は全国での学会発表は初めての経験で、データ収集からスライド作成など苦労するところや、また発表の2、3日前から緊張し睡眠不足になりながらも無事発表を終えることができました。
 結果から見てもこの方法(人間の細胞にダメージを与える活性酸素から細胞を守るビタミンEを固定化したダイアライザーでのon-line HDFとリクセル併用)で行った透析は現在の透析療法・技術の中でもハイレベルのもので、この研究を全国の場で発表することができて良かったと思っています。
 最後に、これからも進化していく医療の中で、最新の最高の透析療法を実施していくために、今回のような学会に積極的に参加し、新しい技術や知識を吸収し、日々の透析治療に生かし、よりよい透析を提供させていただきたいと思います。


36号メインページに戻る

36号メニューに戻る