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平成22年暮

撮影:平成22年12月22日

今年も残りごくわずかとなってまいりました。今年暮れより来年正月にかけては大変寒い日が続きそうですので体調の維持には充分気をつけて下さい。
あいさつはつい先月の40号透析室ニュースにてさせていただきましたばかりなので今回は省略させていただきまして、年末恒例のクイズと楽しいお正月料理(リン、カリウムを上げずにいかにおいしく栄養をとるかなど)や今年の当院の各種学会における実績などを御紹介させていただきたいと思います。
では、皆さんどうぞよいお正月をお迎えください。

 

「透析患者さんの栄養不良について」

透析患者さんには栄養不良がみられることがあります。栄養不良かどうか判断するのに一番適しているのは血液検査ではアルブミンの値です。皆さんはお渡ししている検査結果(体調の評価)で、自分のアルブミンの値を注意してみていますか。アルブミン値は4 g/dl以上が理想ですが、少なくとも3.7 g/dl以上は維持するようにしたいものです。3.6 g/dl未満だと栄養不足の可能性があります。
栄養状態が悪いと、体調が良くない状態が続いたり、体力が落ちいろいろな感染症にかかりやすく、かかれば重症化しがちです。また、アルブミン値が4 g/dlを超えている人(栄養状態の良い人)の方がそうでない人に比べて長生きであることもわかっています。
当院では、透析患者さんの栄養状態についていろいろな面から検討しております。四国透析療法研究会においても、「栄養指標の季節変動に関して」(管理栄養士:高石美由紀)、「血清アルブミン値を中心とした栄養指標の分析」(看護師:加地昭江)といった内容で透析患者さんの栄養状態についての研究発表をおこなってきました。その結果、当院の透析患者さんのアルブミン値の平均は3.8 g/dlであること、夏期に食事量が減るとアルブミン値も低くなること、また、食事でタンパク質の摂取が少ない人はアルブミン値も低い、特に70歳以上の人にアルブミン値の低い人が多い、などということが分かりました。

栄養不良の対策

食欲の低下を防ぐ

食欲の低下はいろいろな原因でおこりますが、透析患者さんで特に重要なのは透析不足です。透析が不足すると、体に尿毒症物質が蓄積し、吐き気や食欲低下といった症状が出てくることがあります。「今日は体調が良くないので透析時間を短くして下さい」と言う患者さんが時々いますが、これは間違いです。体調の悪い時こそいつもよりしっかり透析して、体調をととのえなければいけません。

適切な栄養素をしっかりとる

食事の量が多くてもアルブミン値などでみるとなかなか栄養状態の良くならない患者さんもいます。アルブミンは血液中のタンパク質ですが、だからといってタンパク質を多く含む食品ばかり食べてもリンや尿素窒素が高くなるだけで、アルブミン値は上がりません。タンパク質、炭水化物、脂肪をバランス良く、適切な量をきちんと摂取する必要があります。

 

「お口の中を清潔に保ちましょう」

口の中の病気で代表的なのは虫歯と歯槽膿漏(しそうのうろう:歯周病)です。虫歯と歯槽膿漏は歯を失う原因となります。食事をおいしく食べるためにも歯を守りましょう。
口の中には約300種類の細菌が生息しています。これらの細菌はバイオフィルムという粘着力の強いバリアを作り出して自分たちを守り、虫歯や歯槽膿漏を引き起こしていきます。一方、私たちの口の中には、1日1~1.5Lのだ液が分泌されます。このだ液には、食べ物の消化を助ける作用のほかに、抗菌・免疫作用があり細菌から体を守ってくれています。さらに、口の粘膜を守る作用、歯のエナメル質が溶けて虫歯になることを防ぐ作用、虫歯になりかけた歯の表面を修復する作用などもあります。無色透明のだ液はまさに魔法の液体です。透析患者さんの中には、この魔法の液体であるだ液の分泌量が減少している方が割と多くいます。さらに、透析患者さんは免疫力が落ちており、菌に対する抵抗性が低いということもあり、虫歯や歯槽膿漏になりやすく、また進行しやすいといわれています。
透析患者さんが虫歯と歯槽膿漏から身を守るためには、口の中に虫歯菌と歯周病菌が生活できないような環境を作ることが大切で、そのためには、毎食後と寝る前の歯みがきが大切です。歯みがきは細菌の塊の歯垢(しこう)を取り去るのに一番効果的です。また、口の中の乾燥は虫歯や歯槽膿漏の進行につながります。口の中が乾かないように、うがいを心がけ、乾燥が強い場合は口の保湿剤を使用してください。また、口の中をきれいにすること(口腔ケア)によってインフルエンザの予防にも効果があるともいわれています。

1ヶ月に1本を目安に歯ブラシを交換すると、清潔なうえに歯垢除去の効率がとてもいいので、新しい年には歯ブラシを新しいものにしてみませんか

(内容の一部は、「腎不全を生きる」の中で、毛利憲三先生、松岡哲平先生が書かれている「透析しているからこそ、お口のケアが大切です」を参考にさせていただきました。)

 

「フォルム検査(血圧脈波検査装置)について」

以前、透析ニュースで「あなたの足は健康ですか?」という見出しでお話しした事を覚えておいででしょうか。動脈硬化が進んで、足への血液の流れが悪くなると小さな傷が原因で足を切断するような大きな障害へ発展する可能性もあるという内容でした。足の病変は患者さんの生活の質を著しく低下させる危険性が高いため、当院ではスタッフによるフットチェックや、フォルム検査を定期的に実施しております。
フォルム検査は、手足にマンシェット(血圧計の腕に巻く部分のようなもの)を巻いて静かに横になっていただきます。特に痛みなどの苦痛もなく五分程度で終ります。フォルム検査では、「動脈の硬さ=動脈硬化がどの程度進んでいるか」と、「足の血管の詰まり具合」など血管の状態が分かります。透析患者さんは動脈硬化の進行が早いといわれていますので、ぜひ定期的にフォルム検査を受けられることをお勧めします。

 

「栄養室より」

管理栄養士 高石 美由紀

透析食 お正月料理について

おせち料理は、口取り・煮物・焼き物・酢の物など日持ちさせるために味付けが濃く調理されています。 食塩の摂取量に注意してください。 家庭で煮しめを作るときには野菜を下茹でしてカリウムを落とし、薄味を心がけてください。 おせち料理のカリウム・リンの量は次の通りです。
参考にして楽しいお正月をお過ごしください。

 

果物と言えば…。「コタツでテレビを見ながらミカンを食べる。」寒い冬にはよくありがちな姿ですが、果物の食べ過ぎはカリウムの取り過ぎにつながります。その他、水分やカロリーの取り過ぎにもつながります。注意しましょう。

 

お屠蘇(おとそ)をはじめ、アルコール類を飲む機会が増えます。お酒そのものが“水分”であることと“エネルギー”が摂取されていることを意識しましょう。また、酒の肴の味付け(特に塩分の濃いもの)にも注意しましょうね。

 

「研究発表について」

第55回日本透析医学会学術集会  2010年6月18日・19日・20日開催
演題 リクセルとOn-lineHDF併用による臨床効果
発表者 吉川 基樹(看護師)

第21回愛媛人工透析研究会    2010年8月28日開催
演題 当院の透析液清浄化システム
発表者 野村 祐介(臨床工学技士)

演題 透析管理システムを利用した「体重増加推移表」の作成
発表者 田辺 三恵(臨床工学技士)

演題 当院維持透析患者の睡眠時呼吸障害について〔第一報〕
発表者 吉川 基樹(看護師)

第44回四国透析療法研究会    2010年9月26日開催
演題 栄養指標の季節変動に関しての検討  【学術奨励賞】
発表者 高石 美由紀(管理栄養士)

演題 透析患者の栄養状態の評価
~血清アルブミン値を中心とした栄養指標の分析~
発表者 加地 昭江(看護師)

演題 「体重増加推移表」作成の効果    【学術奨励賞】
発表者 田辺 三恵(臨床工学技士)

演題 当院維持透析患者の睡眠時呼吸障害について〔第二報〕
発表者 吉川 基樹(看護師)

演題 Ⅴ型透析膜PES-SEα eco の性能評価
発表者 野村 祐介(臨床工学技士)