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「新春」

皆様,明けましておめでとうございます。

大変寒い日が毎日続いていますが,体調はいかがでしょうか。うがい・手洗を十分行い,睡眠をしっかりとって,更に十分な栄養のもと適度な運動を行って風邪などひかないように注意してください(これが新型ウイルスの予防にもつながります)。

今年の御正月は皆様には,いつもと違った正月となったことと思います。それは新型コロナウイルス感染が国内でも爆発し,とうとう東京で1日当たり2,500人前後にまで達し,全国での感染者総数が28万人余りに達し重症者が急激に増加して医療崩壊(通常の病気の治療ができないのみならず,新型コロナ感染者の治療もベッドが足りなくて,十分な治療ができない)が発生してきたという状況にあるからです。

1月8日より政府によって緊急事態宣言が発出され,とりあえず東京,千葉,神奈川,埼玉の1都3県にてレストラン,アルコール提供施設での営業時間制限が実施されることとなりましたが,今の拡大速度よりみて,遠からず全国にまで拡大されることになるでしょう。そして移動制限も加わることになるでしょう。

新型コロナウイルスの感染に関しましては,皆様には12月末のお願い(当院からの緊急提言)でも書かせていただきました通り,県内でも透析施設でのクラスター感染が発生し,四国中央市での感染の危機もすぐそこまで迫って来ていると考えられます。そこでくどいようですが,再度以下に記載させていただきます「命を守る行動」をスタッフと皆様方とともに共有して,新型コロナウイルスの感染を予防してまいりましょう。
● 家庭外ではマスクを必ず着用し,マスクなしでの会話はしない。
(送迎バス,待合での会話は控える)
● 不要・不急の外出はしない。
● 日頃会わない人との接触を控え,会食は絶対にしない。
● 手洗,うがい,マスクの着用,3密回避の励行。

今回の透析室ニュースでは,透析治療の合併症の中でも大事な合併症である透析アミロイドーシスについてのお話をさせていただきますのと,生命の維持や生活活動にとって大切な必要エネルギー摂取に関するお話をさせていただきますので,参考にして良好な体調の維持に努めてください。また,最後に新春恒例のクロスワードパズルを掲載しておきますので,奮って御応募して賞品をゲットしてください。

理事長 溝渕 正行

 

透析アミロイドーシス(透析アミロイド症)について

「透析アミロイドーシス」という言葉を初めて聞く人も多いと思いますが,これは透析期間が長くなるにつれて出てくる症状の一つで,10年を超えるあたりから,この症状が出てくる人が増えてきます。近年は,透析技術の進歩と対策も進み,発症遅延・減少傾向にありますが,長期透析患者さんでは依然として発症が多く,治療が難しく深刻な合併症の一つです。

透析アミロイドーシスは,ベータ2(ツー)ミクログロブリン(以下,β2-MGと書きます)と呼ばれる蛋白質が原因になっています。β2-MGは,おもにリンパ球系の細胞表面(異物の侵入から体を守る免疫の役割がある細胞)に存在していて,一定量が血中に放出されます。透析患者さんでは,このβ2-MGが尿の中に排泄されなくなって血中濃度が上昇し,また,粒子が大きく透析では除去しきれないため,長期透析になるとさらに血中濃度が上昇し体内に蓄積されていきます。透析患者さんでは,β2-MGの血中濃度が正常の20~40倍にもなります。
そして,蓄積したβ2-MGは,変性して「アミロイド」という物質になり骨や関節,腱,臓器などの組織に沈着していきます。沈着が続いた部位にはやがて障害がおこり,骨や関節の痛み,変形,運動障害といった症状が出てきます。

透析アミロイドーシスの主な症状

① 手根管症候群
親指から薬指の痺れと痛みがおこる。安静時(就寝中,透析の後半)に症状が強くなる。
② 多関節痛
肩関節,手関節,股関節,膝関節などに痛みが発生。特に肩関節痛が多く,安静時(就寝中,透析の後半)に症状が強くなる。
③ ばね指
指を伸ばす時に,ばねがはねるように指が伸びる「ばね現象」がおこる。
④ 透析脊椎症
● 破壊性脊椎関節症
アミロイドによって脊椎(頸椎と腰椎に多い)が破壊され,脊髄が圧迫されその神経の支配領域での知覚障害や脱力,麻痺がおこる。
● 脊柱管狭窄症
アミロイドが脊柱管に沈着して脊髄を圧迫し腰や足の痛み,しびれなどがおこる。
⑤ 骨のう胞
アミロイドが手根骨(手首の骨),上腕骨骨頭部,大腿骨骨頭部などに沈着し,骨のう胞(骨の空洞)ができる。ひどくなると骨折(病的骨折)をおこす。

透析アミロイドーシスの症状の中で一番よくみられる①の手根管症候群について知っておきましょう。

手根管症候群は,アミロイドによって手の平の付け根の手根管と呼ばれる部分で神経(正中神経)が圧迫されて,親指から薬指にしびれや痛みが発生するものです。
また,親指と他の指の指先を向かい合わせにする動作が難しくなり,きれいな丸(OKサイン)がうまくできない,湯呑やジョッキ等の円筒状の物が持ちにくくなり,完全に握れないなどの症状がでます。症状がひどくなると,指の感覚が鈍くなり,親指の付け根の筋肉がやせてきて,物をつかむなどの細かい動作が困難になります(ボタンが留めにくい等)。
また,握力の低下により,ペットボトルのフタを開けられない,タオルを固く絞れない等の症状も現れます。

手根管症候群の誘発テスト

手関節屈曲テスト(ファーレンテスト)
両手首を直角に曲げて手の甲を合わせて保持し,1分間以内にしびれや痛みが悪化するかどうかをみます。
チネルサイン
手の平の付け根付近(手根管の入り口部)をたたくと,正中神経に沿って小指以外の指にしびれや痛みが響くかどうかをみます。
補助検査として,電気を用いた筋電図検査を行い,手根管をはさんだ正中神経の伝導速度を測定します。

透析アミロイドーシスの予防

アミロイドは手術しても取り除くことがとても困難です。このため透析アミロイドーシスに対しては,予防がとても大切です。現在のところ,発症の予防や進行をくいとめるには,原因となるβ2-MGの血中濃度をできるだけ低く抑えることが重要と考えられており,以下のような方法で,透析前の血中β2-MG濃度を30㎎/L未満に維持することが推奨されています。
● β2-MGの産生を抑える
リンパ球の活性化がおきないよう,透析液の清浄化によってエンドトキシン(細菌が出した毒素)が全く混じっていない高純度透析液を使用し,生体適合性(人体にとって親和性があり異物反応や拒絶反応などを生じない性質)のよい透析膜を使用することが重要です。
● β2-MGの除去効率を上げる
β2-MGの除去効率が高い高性能大面積による血液透析や大量置換オンライン血液透析濾過を積極的に行うこと,透析時間の延長や血流量の増加で十分な透析量を確保することが重要です。
● リン・カルシウム・副甲状腺ホルモン(PTH)を管理する
副甲状腺ホルモン(PTH)が上昇すると,骨がもろくなって変形し,破壊性脊椎関節症が発症しやすいので,リン・カルシウム・PTHの管理が重要です。

透析アミロイドーシスの発症には血中のβ2-MG濃度だけではなく,さまざまな要因(加齢や遺伝学的要因,最終糖化産物,慢性炎症,酸化ストレスなど)が関与しているといわれています。また,血中β2-MG濃度が高ければ高いほど死亡リスクが増大することも明らかになっています。
いずれにしても,β2-MG濃度をできるだけ下げることが,生活の質を保ったまま長生きするためにはとても重要なことです。当院では月1回β2-MGの検査をして皆様にお知らせしていますので,検査データに関心をもってしっかり見ていただきたいと思います。

 

エネルギーは足りていますか?

管理栄養士  飛鷹 佳枝

エネルギーは,生命の維持や生活活動に必要不可欠です。体温を一定に保つことや神経の伝達を正常に行う働きがあり,たんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素からなります。
透析患者さんは,エネルギー不足による低栄養だけでなく,慢性炎症や食欲低下なども合併していることが多く,低栄養になりやすいです。たんぱく質・脂質・炭水化物をバランスよく,適正な量を摂取し,エネルギーを十分摂る必要があります。栄養状態がよいと免疫力も上がります。フレイル(虚弱),サルコペニア(筋肉減少症)の予防にもつながります。

エネルギー不足が続くとドライウエイト(基礎体重)が減少します

食欲不振→ 消費>摂取→ 筋肉などのたんぱく質を燃やしてエネルギー源にする→ やせる→ ドライウエイトが下がる

食欲旺盛→ 消費<摂取→ 体脂肪となり蓄積される→ 太る→ ドライウエイトが上がる

消費=摂取 であればドライウエイトは変動しません
食事量が減ってきたら要注意! エネルギーを増やす工夫が必要です
3度の食事で主食(ご飯,パン,麺類など)をしっかり食べる

少し足すだけ 食パンにバター,ジャム
量は変えず  豆腐→油揚げ,食パン→クロワッサン,水煮缶→油煮缶
肉は脂身のあるもの もも肉→バラ肉

料理や飲み物に加えて
粉飴 甘味が低く,食べやすい 砂糖の代わりに無理なく続けられます
中鎖脂肪酸 一般的な植物油に比べて消化吸収がよく,エネルギーになりやすい

調理法で工夫【ゆでる・蒸す・煮る → 焼く・炒める・揚げる】
しゃぶしゃぶ→とんかつ, 焼魚→唐揚げ・フライ, 酢の物→マヨネーズサラダ
野菜お浸し→野菜炒め, こふきいも→ポテトフライ, 白米→炒飯・ピラフ

必要エネルギー量は個々に異なります。ご相談がありましたら栄養士までお声かけください。